腎性貧血治療薬:薬効ごとのまとめ

P3)腎性貧血とは
腎臓においてヘモグロビンの低下に見合った十分量のエリスロポエチン(EPO)が産生されないことによってひき起こされる貧血であり、貧血の主因が腎障害(CKD)以外に求められないもの
保存期CKD患者では、血中EPO濃度の測定が診断に有用

P5)腎性貧血の治療と治療目標
治療
・赤血球造血刺激因子製剤(ESA)
・HIF-PH阻害薬
・鉄欠乏状態(血清フェリチン値<100μg/L または TSAT<20%)であれば、鉄剤の投与推奨
治療目標
保存期CKD:11g/dL≦ Hb <13g/dL
透析患者:10g/dL≦ Hb <12g/dL
但し、重篤なCVDの既往や合併のある患者あるいは医学的に必要のある患者では
Hb値12g/dL を超える場合にESAの減量・休薬を考慮
死亡リスクの観点からは、Hb≧9g/dLの管理でも許容される

P6)エリスロポエチン(EPO)製剤
・作用機序:EPOは主に腎臓で産生、分泌される糖蛋白質で、赤血球の産生を促す。
・特徴:Hbの目標値は、透析前の保存期では11〜13g/dL、透析患者では10〜12g/dL。患者個々人の状態に応じて適切な治療目標を設定する。EPO投与が後のHb値は12g/dLを超えないようにする。
・薬剤:血中半減期を長くしたネスプ、ミルセラなどがあり、ネスプは骨髄異形成症候群を伴う貧血にも使用できる。

P7)EPO製剤:エスポー、エポジン、ミルセラ
エスポー
・腎性貧血、あるいは貯血量が800ml以上で1週間以上の貯血期間を予定する手術施行患者の自己血貯血に用いる。
・週2~3回投与が必要である。
・エスポーとエポジンの効果に差異はない。
・抗EPO抗体陽性赤芽球癆が発現する。

エポジン
・腎性貧血、あるいは未熟児貧血に用いる。
・週2~3回投与が必要である。
・エスポーとエポジンの効果に差異はない。
・抗EPO抗体陽性赤芽球癆が発現する。

ミルセラ
・腎性貧血に効果がある。
・月1回皮下投与を行う。
・抗EPO抗体陽性赤芽球癆が発現する。

P8)EPO製剤:ネスプ、エポエチンアルファ
ネスプ
・腎性貧血、骨髄異形成症候群に伴う貧血に有効である。
・2週間に1回皮下投与を行う。
・抗EPO抗体陽性赤芽球癆が発現する。

エポエチンアルファBS
・無血清培地による培養及び動物由来成分を用いない精製工程により新たに製造された遺伝子組換えヒトエリスロポエチン(rHuEPO)製剤である。
・透析中の腎性貧血、未熟児貧血に有効である。
・抗EPO抗体陽性赤芽球癆が発現する。
・本剤投与により高カリウム血症が現れる恐れがある。
・シャントの閉塞や血液透析装置内の残血を認める場合があるため、シャントや血液透析装置内の血流量に十分注意する。

P9)HIF-PH阻害薬
作用機序
低酸素誘導因子ープロリン水酸化酵素(HIF-PH)を阻害することで、EPO産生の誘導による造血を亢進し、腎性貧血を改善する。
副作用
VEGFの発現を亢進させるため、悪性腫瘍、網膜疾患の精査が投与前に必要。
どの薬剤も血栓塞栓症のリスクがあり、Hb値の上昇速度が0.5g/dL/weekを上回らないようにする。
薬剤
・週3回投与:エベレンゾ
・毎日内服:ダーブロック、バフセオ、エナロイ、マスーレッド。
ダーブロックは、リン吸着薬や酸化マグネシウム製剤との相互作用がないので、服用時点をずらす必要がない。他の同効薬は併用の際は時間を空ける必要あり。

P10)HIF-PH阻害薬:エスぺレンゾ、ダーブロック、バフセオ
エベレンゾ
・週3回服用する錠剤である。
・リン吸着薬や酸化マグネシウム製剤と併用の際は、前後1時間あける必要がある。
・重大な副作用として血栓塞栓症(2.3%)があり、脳梗塞や心筋梗塞で脂肪に至る恐れがある。そのため、投与開始前に血栓塞栓症のリスクを評価した上で、投与の可否を慎重に判断する。
・妊婦または妊娠している可能性のある女性には禁忌である。

ダーブロック
・透析期のみならず保存期CKD患者の腎性貧血にも使用可能である。
・リン吸着薬や酸化マグネシウム製剤との相互作用がないので、服用時点をずらす必要がない。他の同効薬は併用の際は時間を空ける必要あり。
・用量調節幅が広く、最高投与量の際は一番薬価が高い。
・重大な副作用として血栓塞栓症(0.8%)があり、脳梗塞や心筋梗塞で脂肪に至る恐れがある。そのため、投与開始前に血栓塞栓症のリスクを評価した上で、投与の可否を慎重に判断する。

バフセオ
・透析期のみならず保存期CKD患者の腎性貧血にも使用可能である。
・ダーブロックは同時併用可能である。
・酸化マグネシウム製剤と併用の際は、前後1時間あける必要あり。
・重大な副作用として血栓塞栓症(4.2%)があり、他のHIF-PH阻害薬より血栓塞栓症の割合が高い。

P11)HIF-PH阻害薬:エナロイ、マスーレッド
エナロイ
・透析期のみならず保存期CKD患者の腎性貧血にも使用可能である。
・リン吸着薬や酸化マグネシウム製剤と併用の際は、時間間隔をあける必要がある。
・赤血球造血刺激因子製剤からの切り替え時にHb濃度が低下する傾向が認められる。
・割線があり、半錠にできるため用量調節しやすい。
・重大な副作用として血栓塞栓症(0.7%)がある。

マスーレッド
・透析期のみならず保存期CKD患者の腎性貧血にも使用可能である。
・酸化マグネシウム製剤と併用の際は、前後1時間あける必要あり。
・重大な副作用として血栓塞栓症(脳梗塞(0.3%)、心筋梗塞(頻度不明)、シャント閉塞(頻度不明))等がある。

P12)腎性貧血用剤:チオデロン
チオデロン
・メピチオスタンを有効成分とする経口腎性貧血用剤・抗乳腺腫瘍剤である。
・透析施行中の腎性貧血、乳癌に有効である。ただし、乳癌についてはエストロゲンの働きを抑制するため、エストロゲン依存性の乳がんに有効だが、癌そのものは治せないため第一選択薬ではない。
・透析施行中の腎性貧血に対しては、投与開始後3カ月目頃に効果判定を行い、有効な場合は投与を継続する。
・男性ホルモン薬(アンドロゲン)に近く、男性ホルモン様作用を持つ。そのため、アンドロゲン依存性悪性腫瘍およびその疑いのある患者には使用禁忌である。