炎症性腸疾患(IBD)治療薬 薬効ごとのまとめ

P3)潰瘍性大腸炎 治療フローチャート
5-ASA製剤:軽症〜中等症での寛解導入、寛解維持
ステロイド:寛解導入療法
免疫調節薬
・症状を抑えながらステロイドの減量・中止を可能にする。寛解維持

P4)潰瘍性大腸炎 難治例の治療
ステロイド抵抗例には、下記薬剤が用いられる。
JAK阻害剤
生物学的製剤
・抗TNF-α抗体製剤
・抗α4β7インテグリン抗体製剤
・IL-12/23阻害剤
免疫抑制剤

P5)クローン病
初発・診断時や活動期には寛解導入を目的とした治療を行い、いったん寛解が導入されたら長期に寛解を維持する治療を行う。
治療法には薬物療法、栄養療法などの内科的治療法と外科的治療法があり、単独であるいは組み合わせて治療法が選択される。

P6)5-ASA製剤
5-ASA製剤
・主に軽症〜中等症での寛解導入療法
・寛解維持療法でも広く使用
・5-ASA不耐例(内服開始後下痢の増悪、発熱、
皮疹)があり、注意を要する

P7)5-ASA製剤:アサコール
作用機序
炎症性腸疾患における腸などの炎症を抑え、腹痛、下痢、下血などの症状を改善する。

特徴
軽症〜中等症の活動期潰瘍性大腸炎の寛解導入で、メサラジンが用いられる。クローン病の軽症例にペンタサが用いられる。

回腸下部~大腸で放出。メサラジンを高分子ポリマーでコーティングすることにより、pH7以上となる回腸末端から大腸全域にメサラジンが放出される。
【適応】潰瘍性大腸炎(重症を除く)。
剤皮が溶けきれずに、便中に錠剤が見られる場合がある。
寛解期には、1日1回可能。

P8)5-ASA:リアルダ・ペンタサ・サラゾピリン
リアルダ
回腸下部~大腸で放出。メサラジンを持続的に大腸全域に放出されるように造られた製剤。
潰瘍性大腸炎の活動期から寛解期を通して「1日1回」の投与が可能であり、良好な服薬アドヒアランスが期待できる。
活動期・寛解期の潰瘍性大腸炎においてアサコールと同等または優勢。
肝機能障害、肝炎、黄疸が報告されているため、投与中は定期的に肝機能検査

ペンタサ
小腸~大腸で放出。メサラジンを主に小腸から大腸にかけて徐々に放出するように造られた製剤。
【適応】潰瘍性大腸炎・クローン病。
漫然と1日4000mgの投与を継続しない。
寛解期には、1日1回可能。

サラゾピリン
体内で代謝を受けてメサラジンを放出する製剤で潰瘍性大腸炎などに使用する。
投与開始前・定期的(原則として、投与開始後最初の3カ月間は2週間に1回、次の3カ月間は4週間に1回、その後は3カ月ごとに1回)に血液検査(白血球分画を含む)、肝腎機能検査を実施。
本剤の成分(サラゾスルファピリジン)を利用した抗リウマチ薬(アザルフィジンEN)がある。
尿や汗がオレンジ色に着色する。

P9)ステロイド
ステロイド
・病気の勢いが強い活動期の炎症を抑える
・寛解導入療法で使用
・寛解維持療法では基本的に使用しない

P10)ステロイド:プレドニン、プレドニゾロン
プレドニン、プレドニゾロン
ヒドロコルチゾンを1とした力価:プレドニン4、メドロール5、デカドロン25。
プレドニゾロン製剤。中間型。半減期12〜36h。
ステロイドの薬剤の中でも特に多くの疾患・症状で使用される製剤。

P11)ステロイド:ゼンダコート・レクタブル・プレドネマ
ゼンタコート
副腎皮質ホルモン(プデゾニド)を小腸および結腸近位部にて放出するように設計された腸溶性徐放製剤。
【適応】軽症から中等症の活動期クローン病。軽症から中等症のCD患者を対象とした国内第3相臨床試験では、メサラジンとの二重盲検試験で非劣性。
腸管で吸収後、肝臓で大部分が代謝されるため全身性の副作用が軽減。
減量する場合は、徐々に減量する。

レクタブル
直腸からS状結腸に到達する泡状(フォーム)製剤。
【適応】潰瘍性大腸炎。
1日2回、6週間直腸内投与。

プレドネマ
合成副腎皮質ホルモン製剤。天然の糖質コルチコイドと同じ機序だが天然のものに比べて鉱質コルチコイド作用は減弱されている。
内服薬が効きにくい肛門よりの大腸(直腸~S状結腸)の炎症をしずめる局所療法に用いる注腸剤。
【適応】潰瘍性大腸炎、クローン病。
寛解導入を目的とし、長期の維持療法としては原則用いない。

P12)免疫調節薬
免疫調節薬
症状を抑えながらステロイドの減量
・中止を可能にする
寛解維持療法にも有用
生物学的製剤との併用もされる
効果発現までに約2-3ヶ月を要する

P13)免疫調節剤:チオプリン製剤(イムラン・アザニン・ロイケリン)
イムラン・アザニン
AZT(アザチオプリン製剤)である。
生体内で6-MPに分解され、核酸合成を阻害することにより免疫抑制作用をあらわす。
副腎皮質ステロイドとの併用を考慮する。
NUDT15遺伝子型で、早期の重症骨髄抑制及び脱毛が予測可能。

ロイケリン
NUDT15遺伝子ホモ多型患者において著しい感受性を示し、骨髄抑制が遷延する。
【適応】急性白血病、慢性骨髄性白血病。
ステロイド依存性の潰瘍性大腸炎・クローン病の寛解維持には適応外。
排泄される際に代謝されて尿酸の原因物質になるため、尿酸値が高い方やアロプリノールを服用している方は、本剤を通常の量の1/3~1/4に減量して投与する必要あり。

P15)免疫抑制剤:タクロリムス
タクロリムス
アトピー性皮膚炎の全身(顔面・頸部、躯幹・四肢)の諸症状(皮疹、そう痒感)に優れた臨床効果を示す。
ステロイドのIII群(Strong)と同程度の抗炎症作用を示し、ステロイド外用薬で見られる皮膚の萎縮などの有害反応がないことから、ステロイドのミディアムランクしか使えない顔面や頚部の皮疹に対して使用される。
高頻度に一過性の皮膚刺激感(灼熱感、ほてり感、疼痛、そう痒感等)が認められる。通常、皮疹の改善とともに発現しなくなるが、ときに使用期間中持続することがある。
朝外出前に塗ると紫外線の暴露により刺激感が強まりやすくなるため、1日1回であれば、夜入浴後に塗布する。
2週間の使用にも関わらず、皮疹の改善が認められない場合や悪化する場合は中止する。

P16)生物学的製剤
作用機序
中等症以上のクローン病に対しては、生物学的製剤であるTNFα阻害薬(レミケード、ヒュミラ)やIL-12/23阻害薬(ステラーラ)、α4β7インテグリン阻害薬(エンタイビオ)が用いられる。これらの薬剤は、ステロイドやチオプリン製剤による治療効果が不十分な場合に用いる。

各薬剤の特徴
ステラーラは、IL-12及びIL-23の働きを阻害し、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎などの症状を改善する。
エンタイビオは、炎症を引き起こすリンパ球の腸への遊走を抑制し、クローン病、潰瘍性大腸炎などの症状を改善する。

P17)抗TNF-α抗体製剤:レミケード・ヒュミラ・ゴリムマブ
レミケード
世界初のTNFα阻害薬。
MTXとの併用が必須。
関節リウマチの他、ベーチェット病、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、川崎病の急性期、強直性脊椎炎などにも使用される。
投与中は結核症状の発現に注意。投与中は生ワクチン接種を行わない。
投与前にB型肝炎ウイルス感染の有無を確認する。

ヒュミラ
MTXとの併用が必須ではないが、効果が高まるので併用が望ましいとされている。在宅での自己注射可能。
同じ皮下注射のエンブレルが週1〜2回の注射が必要であるのに対して、2週間に1回で済む。
関節リウマチのほか、ベーチェット病、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、若年性特発性関節炎、化膿性汗腺炎、壊疽性膿皮症などにも使用される。
投与前にB型肝炎ウイルス感染の有無を確認する。

シンポニー
MTXとの併用が必須ではないが、効果が高まるので併用が望ましいとされている。
月1回の診察時に使う皮下注射。在宅での自己注射は可能となった。
MTXとの併用が必須ではないが、効果が高まるので併用が望ましいとされている。
必要に応じて投与量を調整(50mg or 100mg)できる。状態に応じて標準用量の倍量である1回100mgに増量して使用することが可能
胸部レントゲン、ツ反、投与前にB型肝炎ウイルス感染の有無を確認する。

P18)JAK阻害剤:トファシチニブ(ゼルヤンツ®︎:潰瘍性大腸炎のみ)
関節リウマチ領域における世界初のJAK阻害剤。JAKのタイプのうち、JAK1、JAK2、JAK3及びTYK2を阻害する。
関節リウマチだけではなく、潰瘍性大腸炎の適応がある(2021年2月現在、ゼルヤンツのみ)。
肝代謝であり、重篤な肝機能障害例では禁忌。
帯状疱疹に注意。

P19)抗α4β7インテグリン抗体製剤:生物学的製剤 ベドリズマブ(エンタイビオ®︎)
既存薬とは異なり、腸管に選択的に作用するヒト化抗ヒトα4β7インテグリンモノクローナル抗体。全身的な免疫抑制をきたさない。
【適応】中等症から重症の潰瘍性大腸炎、活動期クローン病の治療及び維持療法
既存治療(ステロイド、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、抗TNFα製剤のうち少なくとも1剤)で効果不十分な中等症~重症の患者で、本薬の有効性及び安全性が確認された。
30分以上かけて点滴静注し、急速投与は行わない。
3回投与しても治療反応がない場合は、治療を再考する。

P20)抗IL-12/23抗体製剤:生物学的製剤 ウステキヌマブ(ステラーラ®︎)
免疫反応などに深く関わるIL-12及びIL-23の働きを阻害し、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎などの症状を改善する。
維持期には12週間隔の皮下注射で済むため、他の抗体製剤に比べて患者の治療負担が軽減できる。