逆流性食道炎:治療薬まとめ
P4)プロトンポンプ阻害薬(PPI)
作用機序
壁細胞のH+分泌の最終段階のプロトンポンプを特異的に阻害し、消化性潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群を改善する。
特徴
H2ブロッカーより胃酸抑制効果が強力で、消化性潰瘍、逆流性食道炎の第一選択薬。タケキャブは、イオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)で、既存のPPIとは異なる作用機序を持つ。
副作用
長期投与と関連が疑われている副作用:大腿骨頸部骨折、市中肺炎、C.difficile感染症。上記以外に膠原線維性大腸炎、微量元素欠乏症、認知症など。
保険
保険適用上、PPIは胃潰瘍8週間、十二指腸潰瘍6週間と制限があり、維持療法時はH2ブロッカーに変更する。
P5)PPI:オメプラゾール・ランソプラゾール・ラベプラゾールナトリウム酸塩
世界で最初のプロトンポンプ阻害薬。
患者個々の体質などによる薬の効果の差が大きい。
成人だけでなく、小児にも適応あり。
ランソプラゾール
OD錠(口腔内崩壊錠)や注射剤もあり、用途などに合わせて選択が可能。
本剤の成分(ランソプラゾール)と低用量アスピリンを配合した抗血小板薬(タケルダ配合錠)がある。
PPIの中で、唯一粉砕して経管投与できる。
ラベプラゾールナトリウム
PPIの中で、一番併用禁忌・注意が少ない。
P6)PPI:エソメプラゾールマグネシウム・ボノプラザンフマル酸塩
エソメプラゾールマグネシウム
オメプラゾールより患者個々の体質などによる薬の効果の差が少なく、優れた酸抑制効果を有する。
成人だけでなく、小児に対しての使用も承認されている。小児に適応があるのはネキシウムのみ。
顆粒剤がある。
ボノプラザンフマル酸塩
従来のPPIと、異なる作用機序でプロトンポンプを抑制。他のPPIに比べ、比較的早い段階で高い効果が得られるとされる。
胃潰瘍を始めとした全ての胃酸関連疾患において、ランソプラゾールに対する非劣性と安全性が各種臨床試験で確認された。
本剤の成分(ボノプラザン)と低用量アスピリンを配合した抗血小板薬(キャブピリン配合錠)がある。
長期投与時には、定期的に内視鏡検査を行う。
粉砕可能(他のPPI錠剤は全て粉砕不可)。
タケキャブは、従来のPPIと異なる作用機序(酸による活性化を必要とせず、Kイオンに競合する形でH+,K+-ATPaseを可逆的に阻害し、酸分泌抑制作用を発揮する、Kイオン競合型アシッドブロッカー)でプロトンポンプを抑制する新しいPPIですが、今回はPPIに含めて紹介しています。
P7)H2受容体拮抗薬
作用機序
胃粘膜細胞のヒスタミンH2受容体に拮抗して働き、胃酸の分泌を抑制する。
特徴
PPIが消化性潰瘍と逆流性食道炎の第一選択薬であり、初期治療に用いられることは少ない。何らかの理由でPPIが投与できない症例には最初からH2ブロッカーを用いる。
消化性潰瘍の維持療法では、夜間の胃酸分泌抑制を目的にH2ブロッカーの半量を1日1回睡眠前に投与する。
用法用量
消化器疾患の他、蕁麻疹治療の補助的治療薬などで使用する場合がある。
P8)H2受容体拮抗薬:ファモチジン・ラニチジン塩酸塩・シメチジン
ファモチジン
胃酸抑制作用:ガスター>プロテカジン>タガメット。ただし、胃潰瘍に対する治療効果は薬物間で差はないとされている。
腎機能障害に応じて投与量調整が必要 。
内分泌系への影響を及ぼさない。
注射剤・口腔内崩壊錠がある。
適応外で期待される効果:H1ブロッカーで十分な効果が得られない蕁麻疹・石灰沈着性腱板炎・麻酔前投与による誤嚥性肺炎を予防
ラニチジン塩酸塩
原薬から管理水準を上回る発癌性物質のNMDAが検出され、2019年に自主回収されている。
腎機能障害に応じて投与量調整が必要 。
注射剤がある。
シメチジン
胃酸抑制作用:ガスター>プロテカジン>タガメット。ただし、胃潰瘍に対する治療効果は薬物間で差はないとされている。
高齢者は、錯乱を含む中枢神経系の副作用に注意。
注射剤がある。
H2ブロッカーの中で一番併用注意が多い。
適応外で期待される効果:蕁麻疹・石灰沈着性腱板炎・帯状疱疹・ウイルス性疣贅・PFAPA症候群
P9)H2受容体拮抗薬:ロキサチジン酢酸エステル塩酸塩・ニザチジン・ラフチジン
ロキサチジン酢酸エステル塩酸塩
小児に対して、唯一適応がある。他のH2ブロッカーは全て小児は適応外。
内分泌系、肝薬物代謝酵素に影響を及ぼさない。
粘膜保護作用を併せもつ。
細粒剤、注射剤がある。
ニザチジン
酸分泌抑制作用に加え、消化管運動促進作用ならびに唾液分泌促進作用を示す。
口腔乾燥症などの改善目的で使用される場合もある。
ラフチジン
胃酸抑制作用:ガスター>プロテカジン>タガメット。ただし、胃潰瘍に対する治療効果は薬物間で差はないとされている。
肝代謝であり、腎障害があっても用量調整不要。H2ブロッカーの中で肝代謝はラフチジンのみ。
適応外で期待される効果:胃粘液増加作用
P10)モサプリド
神経伝達物質セロトニンの5-HT4受容体を刺激し、アセチルコリンの遊離促進作用により消化管運動を亢進させる。ドパミン受容体には作用しない。
【適応】慢性胃炎に伴う消化器症状(胸やけ、悪心・嘔吐)、経口腸管洗浄剤によるバリウム注腸X線造影検査前処置の補助。
長期にわたり漫然と投与しない(肝障害のため)。
大腸運動機能亢進作用もあるため、消化管運動低下による便秘に対しても効果がある。ただし、適応外。
P11)六君子湯
慢性の胃腸症状、食欲不振、全身倦怠感などを改善する。
胃腸の弱く、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすい人に用いられる。
悪心嘔吐を止める生薬と、胃の中の水の停滞を除く生薬を合わせている。
機能性ディスペプシアの治療ガイドラインで、エビデンスレベルA、推奨の強さ2。