"COPD治療薬一覧 〜COPDの増悪と薬物療法:ABCアプローチ〜 "

2017年までは、増悪を繰り返す症例に対して推奨

→2018年ガイドラインで喘息病態合併の場合(ACO)に併用と改定。

理由)LABA/ICSとLAMA/LABAを比較検討した複数の臨床試験で、増悪の抑制、呼吸機能の改善、SGRQ総スコアの改善、肺炎リスクの軽減の観点において、LAMA/LABAの方が優れているとの結論が得られたことより。

オーバーラップ症候群
(ACO:Asthma and COPD Overlap)

慢性の気流閉塞を示し、喘息とCOPDのそれぞれの特徴を
  併せ持つ疾患

COPDの15~20%に見られる

COPDの増悪と治療法

 

息切れ、咳や喀痰の増加、胸部不快感・違和感の出現などがみられる  ≪軽症≫

SABAのみで対応可能

抗菌薬

痰の膿性化があれば抗菌薬の投与推奨

増悪を繰り返すことは、患者のQOL低下、呼吸機能低下、生命予後悪化と関連する ≪中等症≫

SABAに加え抗菌薬あるいは全身性ステロイド投与が必要

気管支拡張薬

SABAの反復投与、十分でなければSAMAの併用

原因は呼吸器感染症と大気汚染が多い(約30%は原因不明) ≪重症≫

救急外来受診あるいは入院が必要

ステロイド薬

短期間の全身性ステロイド投与

COPDの増悪時の薬物療法:ABCアプローチ

A(Antibiotics):抗菌薬

 投与例)ABPC/SBT 1.5-3g q6hでエンピリック治療開始。

     緑膿菌カバー必要な場合は、CFPMやTAZ/PIPCを選択。

 投与期間は定まったものは無いが、5-7日間の投与とそれ以上の期間の投与で差はないとされている。(Gold2020 Evidence B)

B(Bronchodilators):気管支拡張薬

 サルブタモール(SABA):2.5mgをネブライザーにより,または2~4パフ(100μg/パフ)を定量噴霧

 式吸入器により、2~6時間毎に投与。

定量噴霧式吸入器(MDI)(スペーサー装置付きまたはなし)もネブライザーも、FEV1に有意差はない

C(Corticosteroids):ステロイド薬

 プレドニゾロン経口またはメチルプレドニゾロン点滴静注40-80mg/day(5-7日)

 経口も経静脈投与も効果に変わりなし。投与量や投与期間を増やしても効果に変わりなく、中止の場合、減量の必要がない。ステロイドの長期投与は肺炎や死亡率の上昇につながるため、投与期間は5-7日を超えるべきではないとされている(Gold2020 Evidence A)

COPDに適応を持つ吸入剤

 

分類 商品名 一般名
LABA/LAMA/ICS テリルジー フルチカゾンフランカルボン酸(FF)、ウメクリジニウム(UMEC)、ビランテロール(VI)
ビレーズトリ ブデソニド(BD)、グリコピロニウム(GP)、ホルモテロール(FM)
ICS/LABA アドエア フルチカゾンプロピオン酸(FP)、サルメテロール(SAL)
シムビコート ブデソニド(BD)、 ホルモテロール(FM)
レルベア フルチカゾンフランカルボン酸(FF)、ビランテロール(VI)
LABA/LAMA ウルティプロ グリコピロニウム(GP)、インダカテロール(IND)
アノーロ ウメクリジニウム(UMEC)、ビランテロールトリフェニル(VI)
スピオルト チオトロピウム(TIO)、 オロダテロール(OLO)
LAMA スピリーバ チオトロピウム(TIO)
シーブリ グリコピロニウム(GP)
エンクラッセ ウメクリジニウム(UMEC)
エクリラ アクリジニウム(AB)

短時間作用性β2刺激薬(SABA)

 

作用機序 β2刺激作用により、すばやく気管支を広げ、喘息発作を和らげる。β2受容体の選択性が高く、心刺激作用は少ない。
使い方 喘息発作やCOPD増悪に対して頓用で用いる。

SABAの使用回数を喘息コントロールの指標として問診し、毎週1回以上吸入している場合には長期管理薬をステップアップする。

専門医

コメント

短時間作用型β2刺激薬(SABA)は気管支喘息の急性増悪(発作)や慢性閉塞性肺疾患の急性増悪時の治療薬として使用する。効果発現まで数分~10数分と即効性があるためレスキューとして使用されるが、効果は持続しない。気管支喘息で症状をSABAだけでコントロールすることは予後を悪くしたり、喘息死を増やしたりという報告もあるので、喘息のコントロールには必ず吸入ステロイドを基本の治療とする。SABAも頻用していると頻脈や振戦などのβ刺激薬としての副作用が出ることがあるので注意が必要。

(呼吸器内科 キュート先生)

長時間作用性β2刺激薬(LABA)

 

作用機序 作用が12時間以上持続し、喘息やCOPDの長期管理に用いられる。
特徴 LABAは抗炎症作用を有しないので、必ずICSを併用する。ICSを併用していれば、LABAの長期使用に伴う増悪リスクは増加しない。
専門医

コメント

長時間作用型β2刺激薬(LABA)は気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の安定期・慢性期の吸入剤の治療薬として使用する。ホルモテロールのように1日2回吸入するタイプと、インダカテロールのように1日1回吸入するタイプがある。特にインダカテロールは長時間効果が持続するため「ultra LABA」と呼ばれている。喘息のコントロールをβ刺激薬だけで行うと予後を悪くしたり喘息死を増やしたりという報告もあるので、喘息のコントロールには必ず吸入ステロイドを基本の治療とする。(呼吸器内科 キュート先生)

吸入ステロイド薬(ICS)

 

作用機序 気道炎症に対する抗炎症作用を有し、気管支喘息の中心的治療薬である。
副作用 経口ステロイドに比べ、全身性の副作用ははるかに少ない。

副作用として、口腔・咽頭カンジダ症、嗄声、咽頭刺激による咳嗽などの局所的副作用があり、うがいが予防に有効である。

使い方 吸入器はスプレータイプのpMDIとドライパウダーのDPIに大別される。高齢者や女性などで、吸入流速が低下している場合は、pMDIの使用を考慮する。
専門医

コメント

吸入ステロイド(ICS)は気管支喘息や重症・増悪を繰り返す慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対して使用する。気管支喘息の治療においては、ステップ1-4まで全ての重症度で基本の治療となる。製剤によって1日1回のものと2回のものがあるので注意が必要。デバイスの違いによって粉を吸入するデバイスは「DPI」、ミストを噴霧するようなデバイスは「pMDI」と呼ばれており、患者ごとに使用が容易な製剤を選ぶ必要がある。ICSも高用量を長期に吸入すると、肺炎や骨粗鬆症のリスクが上がるとも言われているので適応は処方した後もよく検討する必要がある。(呼吸器内科 キュート先生)

抗コリン薬(SAMA)

 

作用機序 アセチルコリンのM3受容体活性化を阻害し、気管支拡張作用を示す。
特徴 短時間型で、早期の軽い息切れ症状に頓用したり、β2刺激薬で効果不十分な呼吸困難時に追加・併用で使用される。
副作用 副作用として口渇・尿閉・閉塞隅角緑内障に注意する。
専門医

コメント

イプラトロピウムとオキシトロピウムが短時間作用型抗コリン薬(SAMA)として位置づけられている。慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬として使用することができるが、臨床の現場では使う機会はほとんどない。いずれの製剤もミストを噴霧するような「pMDI」製剤であり、効果は短時間で限定的。抗コリン薬なので口渇・尿閉・閉塞隅角緑内障には注意する。(呼吸器内科 キュート先生)

長時間作用性抗コリン薬(LAMA)

 

作用機序 アセチルコリンのM3受容体活性化を長時間阻害し、気管支拡張作用を示す。
特徴 COPDの長期管理において、LABAはLAMAに匹敵する気管支拡張効果を示すが、増悪抑制効果はLAMAが優れているため、第一選択薬はLAMAと考えられている。

気管支喘息に対してはスピリーバの有効性が示されており、ステップ2以上の喘息長期管理薬として使用できる。ICS/LABAでコントロール不十分な場合やLABAが副作用で使用できない場合にICSと併用して用いる。

副作用 副作用として口渇・尿閉・閉塞隅角緑内障に注意する。
専門医

コメント

チオトロピウムとグリコピロニウムが長時間作用型抗コリン薬(LAMA)として位置づけられています。特に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の安定期の治療の第1選択薬として使用します。気管支喘息に対しても吸入ステロイドに上乗せする気管支拡張薬としてエビデンスがある。抗コリン薬なので口渇・尿閉・閉塞隅角緑内障には注意する。(呼吸器内科 キュート先生)

吸入ステロイド・β2刺激薬配合剤(ICS・LABA)

 

作用機序 抗炎症作用と気管支拡張作用を有する。
特徴 シムビコートは定期吸入に追加して発作時にも使用可能(SMART療法)。定期使用量が1日4吸入以下の場合は、症状悪化時に1日合計8吸入まで追加吸入可能である。

ICS/LABAはLAMA/LABAより増悪抑制効果が弱いとする報告が多い。喘息・COPDオーバーラップの場合以外は、LAMAやLABA、あるいはLAMA/LABAを優先し、増悪が認められる場合にICSの併用を考慮する。

専門医

コメント

抗炎症作用のある吸入ステロイドと気管支拡張作用のある長時間作用型β2刺激薬の合剤。肺機能の改善や増悪抑制効果のみならず、1度に2種類吸入できるのでアドヒアランスを保つ意味合いもある。ICS・LABAをそれぞれ単独で吸入するよりも効果が高い。「シムビコート」は吸入回数でICSの用量を調整するが、吸入回数が増えるとβ刺激薬も増えてしまうので動悸や振戦に注意が必要。「レルベア」や「アテキュラ」はICSの用量ごとに製剤が異なるのでβ刺激薬が増える心配がない。(呼吸器内科 キュート先生)

抗コリン薬・β2刺激薬配合剤(LAMA・LABA)

 

特徴 2種類の気管支拡張薬を含有し、COPDに適応がある。

単剤で効果不十分な際に用いる。スピオルト、アノーロ、ウルティブロ、ビベスピの4種がある。

専門医

コメント

気管支拡張作用のある長時間作用型β2刺激薬と長時間作用型抗コリン薬の合剤で慢性閉塞性肺疾患(COPD)で呼吸困難の症状が強い、1秒量が低いような症例に使用する。それぞれを単独で吸入するよりもアドヒアランスが保たれることから効果が高い。実臨床では製剤ごとの成分の違いよりも吸入器デバイスがちゃんと患者にあったものを選択する。

(呼吸器内科 キュート先生)

吸入ステロイド・抗コリン薬・β2刺激薬配合剤(ICS・LAMA・LABA)

 

特徴 3剤配合剤で、喘息とCOPDに適応がある。

ICS/LABAやLAMA/LABAより、COPDの増悪抑制効果が高いことが報告されている。

末梢血好酸球数が多いと効果が高いとされ、目安は300/μL以上が示唆されている。

専門医

コメント

吸入ステロイドと2種類の気管支拡張薬が合わさった合剤で慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息に使う。「ビレーズトリ」はCOPDのみに「エナジア」は喘息のみに、「テリルジー」はCOPD、喘息両方に適応がある。COPDに使用する際には気管支喘息の要素のある「喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)」と呼ばれる病態か、増悪を繰り返すCOPDに主に使用される。実臨床ではトリプル製剤とか、3成分配合剤とか呼ばれる。(呼吸器内科 キュート先生)