抗うつ薬 〜各種抗うつ薬の有効性と忍容性:MANGA Study〜

P4)うつ病の症状別第一選択薬
不眠、食思不振がある
ミルタザピン(リフレックス®)

眠気や体重増加が支障となる
選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)
セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬(SNRI)
セロトニン再取り込み/セロトニン受容体モジュレーター(S-RIM)

不安症を併せ持つ
エスシタロプラム(レクサプロ®)、セルトラリン(ジェイゾロフト®)

P6)三環系抗うつ薬
作用機序
セロトニンやノルアドレナリンの再取込みを阻害するが、その他にもヒスタミンH1受容体、ムスカリン受容体、アドレナリンα1受容体なども遮断するため副作用が多い。

特徴
副作用:抗コリン作用(口渇、便秘、眼圧上昇、排尿困難)。心電図異常、不整脈。
アナフラニールは、強迫症状や不安・焦燥に良いとされ、点滴静注が可能である。
アナフラニール、トフラニールは、遺尿症(子どもの尿失禁)に対しても適応あり。

禁忌
閉塞隅角緑内障や尿閉患者には禁忌。

専門医コメント
抗うつ効果に優れており、SSRI等の新規抗うつ薬が無効であっても、三環係抗うつ薬によって改善する例は多くみられる。アナフラニールは、うつ病だけでなく強迫性障害にも良い適応となる。一方で、三環系抗うつ薬は、新規抗うつ薬に比べて、副作用が多く、忍容性が課題である。また、QT延長などの心臓への影響はモニタリングしながら増量すべきである(精神科医 Dr.メントス)

P10)四環系抗うつ薬
作用機序
主に脳内のノルアドレナリンなどの働きを改善することで抗うつ作用を呈する。三環系抗うつ薬に比べると抗コリン作用の懸念が少ないとされる。

特徴
力価:テトラミド60㎎≒ルジオミール75~150mg≒テシプール6㎎。
比較試験において3剤ともトリプタノール(三環系)と同程度。
テトラミドは、不眠、ときにせん妄にも使用される。

専門医コメント
低用量では抗うつ効果は低く、抗うつ剤の第一選択とはなりにくい。副作用は少ないため、不眠症の患者への催眠効果や高齢者のせん妄治療などで使われる。(精神科医 Dr.メントス)

P12)SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)
作用機序
脳内で神経伝達物質セロトニンの再取り込みを阻害し、セロトニンの働きを増強することで抗うつ作用を呈する。

特徴
抗不安・パニック効果があるため、うつ病だけでなく、強迫性障害やパニック障害、全般性不安障害に対して有用。ただし、薬物によって保険上の適応症が異なっているため注意する。
効果発現に時間がかかるため、頓用にはふさわしくなく、強い不安症状に対しては、SSRIの効果が発現するまでの間、BZD系抗不安薬を併用するという治療が勧められる。

注意点
自殺企図がある患者には使用しない。

専門医コメント
うつ病や不安障害、強迫性障害などの疾患の第一選択薬として広く使用されている。副作用は内服後速やかに出現する可能性があるが、効果発現には2週間程度の時間が必要である。アドヒアランスの向上のため効果と副作用の発現のタイミングは、十分に説明して処方をする。不安障害、強迫性障害の治療効果は薬物療法のみでは効果不十分であり、非薬物的療法である認知行動療法等の併用が必要と考える。(精神科医 Dr.メントス)

P15)SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬)
作用機序
脳内でセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、これらの神経伝達物質の働きを増強することで抗うつ作用などを呈する。

特徴
セロトニンとノルアドレナリンの双方に作用するため、SSRIの効果に意欲向上が加わり、より広い治療スペクトラムとなりうる。

注意点・禁忌
イフェクサーやサインバルタは、セロトニン再取込み阻害作用が強く効果が期待されるが、投与早期の胃腸症状や頻脈、血圧上昇などに注意する。
高度腎障害、肝障害患者は禁忌(ミルナシプラン以外)。

専門医コメント
イフェクサーは低用量ではセロトニン効果、高用量ではノルアドレナリン効果が追加されると薬理上ではあるが、実臨床ではそのような明確な違いを容量依存的に感じることはない。サインバルタは、意欲低下しているうつ病症例のみならず、慢性疼痛の治療にも使用される。(精神科医 Dr.メントス)

P18)NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬):ミルタザピン
作用機序
α2受容体を遮断し、セロトニン・ノルアドレナリン放出を促進することで、抗うつ作用を呈する。

特徴
SSRI、SNRIで問題となる胃腸症状や性機能障害が少ない。

注意点
眠気や体重増加に注意する。

専門医コメント
抗うつ効果に優れ、不安や焦燥の強い中年期以降のうつ病には、第一選択薬としてよく使用する抗うつ薬である。眠気や食欲亢進といった副作用があるが、それが、不眠や食欲不振の改善に繋がる場合もあり、治療上有効となる場面も多い。(精神科医 Dr.メントス)

P19)S-RIM(セロトニン再取込み阻害・セロトニン受容体調節薬)ボルチオキセチン
作用機序
セロトニン再取り込みに加えて、セロトニン1A受容体を刺激することで、抗うつ作用を呈する。

特徴
セロトニン再取り込み阻害作用は弱いが、5-HT1A刺激作用があるため、抗うつ効果は担保される。胃腸症状や性機能障害が少ない。

注意点
増量は1週間以上間隔を空ける。

専門医コメント
ボルチオキセチン(トリンテリックス®)がこの分類に入る。SSRIに比較するとセロトニンの再取り込み阻害が少ないとされるが、消化器症状などの全般的な副作用は少なく、他のSSRIやSNRIにて忍容性が無い場合にも使用しやすい薬剤である。(精神科医 Dr.メントス)

P20)SARI(セロトニン遮断再取込み阻害薬):トラゾドン
作用機序
シナプス後膜のセロトニン5-HT2受容体阻害と、セロトニン再取込み阻害作用により、抗うつ作用を呈する。

特徴
抗うつ作用は弱いため、うつ病に対する主剤として用いられることはほとんどなく、睡眠薬として用いられることがほとんどである。三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬と比較し、抗コリン作用が軽減されている。

専門医コメント
トラゾドン(デジレル®)がこの分類に入る。低用量では抗うつ効果は弱く、抗うつ剤の第一選択とはならない。副作用は少ないため、不眠症の患者への催眠効果や高齢者のせん妄治療などで使われる場面が多い。(精神科医 Dr.メントス)