放射線治療の線量分割・LD-SCLCの加速過分割照射について

放射線治療の治療法を語る時「〇〇Gyの照射をおこないました」のみでは、治療の情報として充分ではありません。1回の線量と総線量で治療効果が変わってきます。では、1回の線量を変えるとどのような影響が出るのでしょうか。

また、肺がんの分野ではLD-SCLC(限局型小細胞肺がん)に対して「加速過分割照射」という1.5Gyを1日2回、3週間おこなう特殊な照射法がおこなわれています。なぜLD-SCLCは、加速過分割照射がおこなわれているのかご存じでしょうか。

この記事では、放射線治療における1回の線量を変えるとどうなるのか、加速過分割照射をLD-SCLCにおこなうようになった根拠をわかりやすく説明します。

1回の線量を変えることで起こる、覚えておくべき5つのポイント
放射線治療では、1回の線量で治療効果が変わってきます。そのため、1回の線量を変えることでどのような変化が起きるのか理解しておくことが重要です。1回の線量を変えると起こる基本的な事項として、以下に5つ紹介します。

①放射線治療の効果は1回何Gyを何回で入れたかで決まる
②1回の線量が多いほど、晩期の有害事象が大きくなる
③1回の線量が少ないほど腫瘍と正常組織の影響差が大きくなり、効果は同じで晩期の有害事象が減少する
④同じ効果の線量を入れるのならば、短い日数で照射したほうが腫瘍に対する効果が高くなる
⑤正常組織への照射の影響はおおよそ6時間で回復する

これらのポイントをもとに、開発されてきた照射法を解説します。

照射法の工夫とそれによっておこる利点・欠点
1回線量を変える工夫をおこなうことで、どのような影響が出るのか、おもに頭頚部がんで研究がおこなわれてきました。その方法として「かぶんかつしょうしゃ」があるのですが、「かぶんかつしょうしゃ」には「寡」分割照射と「過」分割照射があり、一文字違いで紛らわしいです。現在は「過」分割照射はおもに「加速過分割照射」のみにおこなわれています。それぞれの照射法における利点と欠点は、以下のとおりです。

寡分割照射:1回の線量を上げてできるだけ早く終わらせる
寡分割照射は同じ効果の線量を入れる場合、1回の線量を上げて短期間で終わった方が効果が高いことを利用した照射です。
・利点:照射期間が短くなるという利便性、うまく総線量を設定すれば急性期有害事象が減る
・欠点:晩期の有害事象は増える可能性がある
照射技術の発展により、晩期の有害事象が出てほしくないところにはあてずに、あてたいところにあてられるようになりました。また、生物学的な背景や臨床試験の結果、照射期間が短くなる利便性などから、照射回数を減らす寡分割照射はさまざまな癌腫(前立腺がんや乳がんなど)で広がりつつあります。

加速過分割照射:1回線量を下げるが、1日に複数回照射
1回の線量を下げることで、正常組織と腫瘍組織への照射効果の差が大きくなり、副作用が減ることを期待した照射です。しかし、それだけでは照射期間が長くなってしまい治療効果が低下するため、1日に複数回照射することで期間を伸ばさないように対応をします。正常組織の照射の影響からの回復を待つため、照射は6時間以上の間隔をあけることが必要です。
・利点:晩期有害事象の低減を狙える
・欠点:急性期有害事象が強くなる
加速過分割照射は1日の線量を増加させますが、1回の照射線量が減るため、晩期の有害事象が減ります。ただし、1日2回照射するという手間がかかる照射のため、現在は頭頚部がんやLD-SCLC以外では加速過分割照射はほとんどおこなわれなくなっています。

LD-SCLCでおこなわれる加速過分割照射の根拠
LD-SCLCにおいて加速過分割照射が標準治療となったのは、1999年にNEJMに報告されたランダム化III相試験が根拠です[2]。45Gyを1日1.5Gy*2回で3週間(加速過分割照射)または、45Gyを1日1.8Gy*1回で5週間の照射の2群にわけ、前者が生存で有利という結果でした。SCLCの分裂速度を考えたときに、短期で晩期の副作用も考えて線量をしっかり入れられる、という加速過分割照射の利点が生かされた結果ともいえます。
LD-SCLCでの加速過分割照射と通常分割照射との比較
加速過分割照射は1日2回照射と手間がかかります。そのため、通常の1日1回2Gyで66Gyまでおこなう群と、標準治療の45Gy加速過分割照射の群を比較するランダム化第III相試験がおこなわれました(CONVERT試験)[3]。
66Gyの優越性を示す目的の試験でしたが、毒性も生存も標準治療の加速過分割照射に優位性を示せず、標準治療は45Gyの加速過分割照射のままとなりました。また、結果は正式な論文発表とはなっていませんが、1日2Gyを7週間で照射する群(70Gy)と比較するRTOG0538/CALGB30610でもネガティブな結果となっています[4,5]。

現在のLD-SCLCの標準照射法と、今後の展望
加速過分割照射は、できるだけ短期に照射を終了し、かつ晩期の有害事象を少なくする照射法です。ですから分裂の早いSCLCに使用するのは理にかなっています。
2022年の段階では、大規模ランダム化III相試験でLD-SCLCの45Gyを照射する加速過分割照射を上回る成績を出した放射線照射法はなく、20年以上標準の照射法となっています。しかし、照射技術の発展や照射野の工夫などで、新たな線量分割での放射線照射法の有効性が第Ⅱ相試験で報告されてきているところです[6,7]。新たに報告されてきている照射法が標準になってくる可能性があります。

執筆:関西の放射線治療医

参考文献
[1] M Saunders et al. Continuous hyperfractionated accelerated radiotherapy (CHART) versus conventional radiotherapy in non-small-cell lung cancer: a randomised multicentre trial. CHART Steering Committee Lancet 1997
[2] A T Turrisi et al. Twice-daily compared with once-daily thoracic radiotherapy in limited small-cell lung cancer treated concurrently with cisplatin and etoposide NEJM 1999
[3] Corinne Faivre-Finn et al. Concurrent once-daily versus twice-daily chemoradiotherapy in patients with limited-stage small-cell lung cancer (CONVERT): an open-label, phase 3, randomised, superiority trial Lancet Oncol. 2017
[4] https://ascopubs.org/doi/abs/10.1200/JCO.2021.39.15_suppl.8505
[5] https://twitter.com/DrSanjayPopat/status/1401537961154461701 (参照2022-6-29)
[6] Bjørn Henning Grønberg et al. High-dose versus standard-dose twice-daily thoracic radiotherapy for patients with limited stage small-cell lung cancer: an open-label, randomised, phase 2 trial Lancet Oncol. 2021
[7] Bo Qiu et al. Moderately Hypofractionated Once-Daily Compared With Twice-Daily Thoracic Radiation Therapy Concurrently With Etoposide and Cisplatin in Limited-Stage Small Cell Lung Cancer: A Multicenter, Phase II, Randomized Trial Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2021