ステージ3Aの非小細胞肺癌における術後補助化学療法としてのエルロチニブの可能性

要約
Yue Dらは、完全切除されたEGFR遺伝子変異陽性のステージ3Aの非小細胞肺癌を対象に、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬「エルロチニブ」(商品名:タルセバ)の有効性に関する第II相ランダム化比較試験を実施(EVAN試験)。

その結果、術後補助化学療法のエルロチニブは、殺細胞性抗癌剤を投与されたコントロール群と比較して、統計学的に有意に無病生存期間と全生存期間を延長した。本論文は、EVAN試験のアップデートされた結果として、Journal of Clinical Oncology誌において発表された。

背景
・完全切除されたステージ3Aの非小細胞肺癌の術後補助化学療法は殺細胞性抗癌剤が標準治療であり、シスプラチンとビノレルビンが使用されることが多い。
・ADAURA試験においては、第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬のオシメルチニブが、完全切除されたEGFR遺伝子変異陽性のステージ2とステージ3の非小細胞肺癌において有意に無病生存期間を延長した。しかし、全生存期間に関しては優位性が示されていない。
・エルロチニブは、EGFR遺伝子変異陽性の進行期非小細胞肺癌に対する第1世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬であり、オシメルチニブよりも安価である一方で、術後補助化学療法としての可能性が期待される。

研究デザイン
・肺葉切除または、肺全摘により完全切除されたEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌で、病理病期がIIIAであった患者が対象
・最終的に102人が「エルロチニブ群」と「対照群(殺細胞性抗癌剤であるシスプラチンとビノレルビンを投与)」にランダム化
・主要評価項目:無病生存期間
・副次評価項目:全生存期間、5年生存率、肺癌再発

研究結果
・ITT(Intention-to-treat)解析としての無病生存期間におけるハザード比:0.38(95% CI, 0.20 to 0.70; P<0.001)
・ITT(Intention-to-treat)解析としての全生存期間におけるハザード比:0.37(95% CI, 0.19 to 0.73; P=0.003)
・エルロチニブ群の5年生存率は84.8%、対照群の5年生存率は51.1%
・探索的解析としての全ゲノム解析において、UBXN11遺伝子における一塩基多型は、エルロチニブ群における短い無病生存期間と有意に相関した。

結論
・完全切除されたEGFR遺伝子変異陽性のステージ3A非小細胞肺癌患者において、術後補助化学療法としてのエルロチニブは、殺細胞性抗癌剤を投与された対照群と比較して、有意に長い無病生存期間と全生存期間を示した。

コメント
・術後補助療法としてのエルロチニブは、全生存期間において、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬として初めてコントロール群との間に統計学的有意差を認めた。
・ADAURA試験と比較して、対象をステージ3Aに絞っている点、対照群を標準治療である殺細胞性抗癌剤と設定している点において結果の解釈が容易である。
・探索的解析として、全ゲノム解析がおこなわれていることは興味深い。
・一方で、単一の国でおこなわれた試験であり、サンプルサイズが小さいことを考慮すると、結果の検証には大規模III相試験の実施が望ましい。

原著
https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/JCO.22.00428

執筆:白浜町胸部外科医