夜に叫ぶ!パーキンソン病を予測するレム睡眠行動異常症とは

「うちの人、最近、夢の中で大声出してけんかしているんです……」

患者の家族さんから上記のような相談を受けたことはないでしょうか。寝言くらいなら大きな問題ではないと思いますが、睡眠中に大声で叫んだり、隣に寝ている人を殴ったりする人がいます。決して寝癖が悪いわけではありません。レム睡眠行動異常症(RBD)という病気が考えられます。またRBDは、パーキンソン病などの神経変性疾患を予測する症状として注目されています。今回は、RBDの診断方法ならびに関連する神経疾患についてみていきましょう。

RBDの特徴的な症状と経過とは?
50代の男性Aさんは、妻と子供との4人暮らし。まじめな性格で、お酒もたばこもしません。夜は和室に布団を敷き、妻と隣り合わせで寝ています。和室には和ダンスが置いてあり、隣の部屋とはふすまで仕切られています。ある夜、妻は隣で寝ているAさんが叫ぶのを耳にしました。妻は「悪い夢にでもうなされたのかな」とあまり気にも留めませんでした。しかし、数か月のちの夜中、Aさんはむくっと起き上がり「だから言っただろうが!!」と大声を出して、妻に殴りかかってきたのです。びっくりした妻は、怖くて一緒に寝られなくなってしまいました。翌週、一人で寝ることになったAさんはさらに問題を引き起こします。なんと、ふすまをこぶしで殴って穴を開け、和ダンスに殴りかかって血まみれになっていたのです。

まじめなAさんのあまりの豹変ぶりに心配になった妻は、病院を受診するように勧めます。睡眠専門のクリニックで診断された病名はRBDでした。寝る前に服用する薬をもらい、夜中に暴れることはほとんどなくなりました。しかし5年後、Aさんは右手がふるえて、右足が思うように上がらないことに気づきます。そう、パーキンソン病を発症したのです。以来、Aさんは定期的に脳神経内科を受診することになり、パーキンソン病との長い付き合いが始まりました。

RBDの診察のポイント;覚醒の仕方を観察する
夜間の行動異常イコールRBDではありません。てんかんや薬物、代謝性疾患による意識障害などを鑑別しておく必要があります。最も簡単な鑑別方法は、刺激による覚醒の仕方を観察することです。

通常、てんかんなどの意識障害に伴う夜間の行動異常の場合、刺激による覚醒は困難で、自分の行動を説明することはできません。RBDの場合は、覚醒が比較的スムーズなので、なぜその行動をとったかの説明が可能です。覚醒を促すことで、夢と行動の内容を説明できることをDream recallと呼びます[1]。

診断にあると便利な、RBDスクリーニング問診票
Dream recallが可能でRBDを疑った場合は、睡眠ポリグラフ検査(PSG)を考えましょう。PSGは、レム睡眠期に抑制されるべき骨格筋の筋活動が、脳幹部に存在する病変などにより抑制されないことを示すためにおこないます。しかし、現実にはRBD疑いの患者様全員にPSGを施行することは困難です[1]。

そこで、簡単にRBDのスクリーニングができる、日本語版RBD screening questionnaire(RBDSQ-J)という質問紙票を活用しましょう[2]。13項目からなる質問に対し「はい」「いいえ」で返答し「はい」が5個以上ならRBDの疑いです。確定診断には、PSGが可能な睡眠クリニックに紹介することを考えましょう。

RBDと神経変性疾患の関係とは?
男性AさんのようなRBDの患者様は、高率にパーキンソン病や多系統萎縮症、レビー小体型認知症などの神経変性疾患を合併することが報告されています[3]。特に頻度が多いパーキンソン病や多系統萎縮症、レビー小体型認知症とRBDは、病理学的にアルファシヌクレイン陽性の蛋白凝集体が形成され、何らかの共通の発症メカニズムを持つことが想定されます。パーキンソン病にはRBD以外にも、嗅覚障害や便秘、むずむず脚症候群などの非運動徴候が運動徴候よりも前に出現するといわれています。非運動徴候は、パーキンソン病発症を予言する因子となりうるのです。

以下に、神経変性疾患におけるRBD合併の頻度を示します。

疾患 RBDの頻度
パーキンソン病 15-60%
多系統萎縮症 90%
レビー小体型認知症 86%
進行性核上性麻痺 11%
アルツハイマー病 7%
大脳皮質基底核変性症 5%
前頭側頭型認知症 3%

RBDは治療できる!
非薬物療法としてまず考えるのは、異常行動による事故を避けることです。例えば、ベッドを低くしたり、危険なものを部屋に置かないようにしたりします。薬物療法としては、リボトリール(クロナゼパム)0.5-2mgの就寝前投与が9割近い患者様に有効です[4]。ただし、神経疾患の発症を予防するというエビデンスは残念ながらありません。

RBDを診断し、神経疾患の早期発見につなげよう!
今回は、睡眠中の行動異常であるRBDを紹介しました。RBDの患者様は、家族から単に寝癖の悪い人と誤解され、結果的に家族関係がギクシャクすることがあります。しかし、RBDはれっきとした睡眠障害という病気です。神経難病の予測因子となる可能性もあります。

RBDを考えた場合は、まずRBDSQ-Jでスクリーニングをし、確定診断のために睡眠クリニックなどの受診を勧めましょう。そして、神経症状が出現した際にはすみやかに脳神経内科へ紹介してください。早期に発見し、早期に治療介入することは患者様の日常の生活を大きく変えるきっかけになるので重要です。

執筆:エスディー@脳神経内科

[1]辻省次編. アクチュアル脳・神経疾患の臨床 パーキンソン病と運動異常.中山書店.2013.
[2]The REM sleep behavior disorder screening questionnaire. Sleep Med. 2009;10:1151-1154.
[3]Sleep disturbances in patients with parkinsonism. Nat Clin Pract Neurol. 2008;4:254-266.
[4]Treatment of the sleep disorders associated with Parkinson’s disease. Neurotherapeutics. 2014;11(1):68-77.