非小細胞肺がんにおけるOligometastatic diseaseの治療について[症例提示]

さて、今回は「肺がんコミュニティ」における肺がん治療戦略について、複数の先生に本音で語っていただきました。その内容を座談会記事としてお届けいたします。

呼吸器内科医 心拍(以下 心)@dr_shinpaku
関東近郊の市中病院で勤務医をしている10数年目の医師になります。日頃から肺がん診療の進歩についていくのがやっとという状況です。

呼吸器内科医 tomisuke先生 (以下 tomisuke)@nextommysuke
関東の腫瘍専門施設に在籍する中堅の呼吸器内科専門医です。胸部悪性腫瘍に関しては多数の症例を経験しております。

呼吸内科医チラ先生(以下 チラ)@mdchin_chiiiira
呼吸器内科を専門にする若手から中堅に差し掛かる世代です。これまで2次救急総合病院でしばらく肺癌診療にも多く携わってきました。

放射線治療医A先生(以下 A)
東海地方の大学病院で放射線治療医をしています。ここ数年の肺がん治療(特に3-4期)の進歩は隔世の感があると感じています。

江口真澄先生(以下 江口)
放射線治療医です。現在は関東の大学病院に勤務しています。肺癌としては1期と3期の治療に携わっています。よろしくお願いします。

呼吸器外科医mfj先生(以下 mfj)
10年前後の呼吸器外科医です。肺がんの周術期治療や術式についてなど、今後もパブリッシュされる、また新しく承認されるものなどをもとにお話できればと思います。

呼吸器外科医白浜先生(以下 白浜)
肺がん等の外科治療を行っております関西の大学病院所属の呼吸器外科医です。薬物療法後の手術に力を入れております。リアルワールドデータの研究にも注力しています。

呼吸器内科医Diokiss先生(以下 Diokiss)@Dio_kiss
地方の中核病院で呼吸器内科をしております。最近は専ら感染の方をしておりましたが、肺がん診療はとても興味があり、改めて勉強させていただきたいと思います。

放射線治療医関西先生(以下 関西)
関西で放射線治療医をしています。卒後15-20年目で主な専門は肺、消化器系になります。

遠隔転移を有する非小細胞肺癌の標準治療は薬物療法であり、局所治療の追加による生存延長効果は明確に示されていません。一方で、転移病変が限られていた場合(Oligometastatic disease)において、局所治療を行ったことにより長期予後が得られた症例が存在します[1]。

今回は症例提示をもとに各々の先生のご意見をまとめています。

症例:70代、男性
X-4年右上葉肺腺癌で上葉切除後、X-3年に縦郭リンパ節転移及び左副腎転移により再発し、ICI単剤治療が奏功し、以後2年以上継続。しかしながらX年左副腎転移のみが再増大。縦隔リンパ節転移は縮小維持。

このような症例に対して、病変が現在副腎転移のみということで
①左副腎切除
②左副腎への放射線治療
③PDとしてレジメン変更
④EUS-FNAで生検(可能ならですが穿刺厳しそう)
⑤その他

皆様のご意見をお伺いできればと思います。

tomisuke:外科の先生が切除を検討して頂けるなら切除(と共に病理評価)、そうでなければプラチナ併用または照射でしょうか。

白浜:切除だと思います!

チラ:病変が副腎のみであれば、外科へ切除可能か依頼をし、不可であれば放射線を検討すると思います!

心拍:似た症例を二例ほど経験して、オペや放射線治療が適応になると聞きました。ガイドラインにもまだ反映されていないかと思いますが、複数箇所からそのようなコメントがありました。

江口:チラ先生と同様です。当院では後腹膜は泌尿器科で切除してもらうかと思います。

心拍:副腎に対するEUS-FNAはなかなか難しいのか施設によっても対応可能かわかれるようです。
A:oligo metaとして根治的な治療をするのがいいのではと思います。下記の論文が参考になると思います。
http://www.haigan.gr.jp/journal/full/061020095.pdf

Diokiss:似たような症例を経験したことがあります。その際はキャンサーボードでの討議の結果、まずは放射線照射をしました。奏功したのですが再増大してきたため、そしてその間に他部位の再発が認められないため、副腎切除の方針となりました。

関西:副腎は結構動くので、定位照射が難しいのと、oligo metaが言われる前から脳転移のみ、副腎転移のみは積極的な局所治療が結構行われていたと思います。手術をお勧めします。

心拍:この症例では左副腎が再増大する前からオペでも良かったのでしょうか?

関西:妥当な選択肢だと思います。以前、当院にいたアグレッシブな先生から一箇所のみ転移あり、もしその転移が無ければII期相当の肺がんに対して、肺の原発巣は手術、転移巣は定位照射、という依頼をいただいたことがあります。

分子標的治療薬やICIが効かなくなってきた時、効かないクローンだけ手術や放射線照射というのは今後の主流選択となると思います。

mfj:オリゴメタというより、オリゴプログレッションですかね。
肺がんは比較的切除や放射線治療などの効果が高いと言われていますので、やはり当院でも副腎切除すると思います。下記に参考となる論文を提示しますね。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7226015/

関西:ASCO2022では乳がんのオリゴメタの試験は失敗に終わってしまいました。前立腺がんや肺がんのように長期に効いてくれる薬剤がベースにないとオリゴメタの考え方は厳しいのかもしれません。

白浜:オリゴメタの方は緩徐な経過ですし、臨床試験ベースではなかなか統計学的優位差がつかないでしょうね。患者セレクションが重要ですし、脳、副腎、肺の単発は切除しても良いと思います。

mfj:私も脳や肺、副腎、あとは骨の経験もありますがオリゴでTKIの耐性が出来ていそうだったり、単発の転移は切除か放射線治療などの局所治療を行いますね。オリゴメタならラッシュで来ないことを確認するために少し待って判断したいところです。

関西:下記は最初からあるオリゴメタの報告ですが、TKIの場合、オリゴなら病変を放射線治療でたたく、という手段は有効というデータになります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35094066/

下記も有名な論文で、ED-SCLCに化学療法が良く効いていたら胸部照射とPCIをすることで長期予後が伸びるというデータです。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(14)61085-0/fulltext

関西:別に高線量ではなくても、腫瘍量を減らすだけでも意味があったりします。

心拍:先生方、それぞれの視点でコメントいただきありがとうございました。非小細胞肺がんにおけるオリゴメタの治療戦略について、内科・外科・放射線治療科といった様々な診療科の先生のご意見を伺い、またディスカッションをしていただき大変勉強になりました。ありがとうございました。

(敬称略)

執筆:Dr.心拍

参考
[1] 肺癌第61巻第2号 (haigan.gr.jp)