【読了時間10分】新アナフィラキシーガイドラインを学ぼう

▶【読了時間10分】新アナフィラキシーガイドラインを学ぼう

日本アレルギー学会が刊行した、アナフィラキシーのガイドラインが2022年8月に8年ぶりに改定されました(以下、新ガイドライン)。

アナフィラキシーは重篤な全身性のアレルギー反応で、死に至ることもあります。すべての医師が出会いうると言ってもおかしくない重症疾患ですが、アナフィラキシーを診断する自信はありますか?アナフィラキシーの治療を即断できますか?ちょっとでも「自信ないかも……」と、不安な気持ちがよぎった方は、ぜひこの記事を読んでみてください。

救急科専門医の私も、アナフィラキシーの診断・治療をクリアカットに決断できない場面にときどき遭遇しますので、みなさんの懸念はよく理解できます。新ガイドラインの変更点や見どころを一緒に勉強して、患者さんの急変に備えていきましょう!

結論:アドレナリン投与をためらわない

本当に時間がない人向けに、新ガイドラインから読み取れる大切にしたいメッセージをずばりお伝えします。それは、充分な量のアドレナリンを躊躇せずに投与することです。

アナフィラキシーに対する第一選択薬は、アドレナリン0.01mg/kg(成人最大0.5mg)の筋注です。旧版から用量の記載に変更はありませんが、新ガイドラインでは、アドレナリン筋注の推奨容量として成人は0.5mgと簡素化して考えてもよいと書かれるようになりました。

慣習的に0.3mg筋注と覚えている医師が多いため、充分なアドレナリン用量を覚えなおすよい機会になりそうです。体格の小さな患者以外は、0.5mgで統一するのが覚えやすいですね。

合併症をもつ患者では、リスクとベネフィットを考えつつも、アナフィラキシー治療におけるアドレナリン使用の絶対禁忌疾患は存在しないという記載が追加されています。また、アドレナリン投与の30分以上の遅れは二相性反応に関連する、妊婦のアナフィラキシーでも胎児を守ることにつながるのでアドレナリンの適応であるという記述も追加されました。

新ガイドラインでは、アドレナリン投与をきちんとおこなうべきであるということを改めて実感させられます。

▶診断基準はシンプルになり覚えやすくなった
アナフィラキシーはどのように診断するのでしょうか。新ガイドラインからは、診断基準が整理されたので、しっかり覚えてアナフィラキシーをすぐに認知し、介入につなげられるようになりましょう。以下の2つのうち、どちらかを満たす場合にアナフィラキシーと診断できます。

・皮膚、粘膜、またはその両方の症状が急速に発症した場合において、気道/呼吸症状、循環器症状、重度の消化器症状がある。
・典型的な皮膚症状を伴わなくても、当該患者にとって既知のアレルゲンまたはアレルゲンの可能性がきわめて高いものに暴露されたあと、血圧低下または気管支攣縮または喉頭症状が急速に発症した。

つまり、要約すると以下のようになります。
・皮膚症状に臓器症状(呼吸器、循環器、消化器)を伴った
・皮膚症状がなくてもアレルゲン暴露後の血圧低下、気管支攣縮、喉頭症状がでた

旧版では、重症アナフィラキシーに対して、アドレナリン筋注の適応があると記載されていましたが、新ガイドラインでは削除されました。アナフィラキシーと診断したら常に、アドレナリンの必要性を検討しながら診療を進める必要があります。

治療薬としてグルカゴンが初登場
アドレナリン不応性アナフィラキシー(特にβブロッカーが投与されている患者)の治療として、グルカゴンが追加されました。成人量として1〜5mgをゆっくり5分以上かけて静脈内投与します。グルカゴンは短時間作用型であり、5〜10分毎に1mgずつ反復投与、あるいは5〜15μg/分で持続点滴投与が可能です。

アドレナリン不応性アナフィラキシーに対するグルカゴン投与はすでに臨床利用されており、ガイドラインにも新しく記載されるまでになりました。筆者は、多くのアナフィラキシーを治療しましたが、アドレナリン筋注の反復投与までで軽快することが多く、グルカゴンの使用経験は少ないです。たまにしか使わないからこそ、ガイドラインに利用方法が記載されたことは安心につながりますね。

グルカゴン投与後は、嘔気・嘔吐、高血糖に注意して経過観察を続けましょう。

とにかくアドレナリン
今回はアナフィラキシーガイドライン2022の変更点のうち、注目したいポイントを絞ってお伝えしました。アナフィラキシーの早期認識とアドレナリン筋注が、やはり非常に重要です。

アドレナリンは効果の強すぎる薬というイメージを持っている医師も多く、少なめに投与したくなったり、ほかの薬剤を投与したくなったりしていたかもしれません。しかし、この記事を読んだあとなら、適切にアドレナリンを投与できると思います。

新ガイドラインは可読性の高いデザインで、約30ページと短いため、通読もおすすめです。明日からの臨床では、アナフィラキシーに自信を持って対応していきましょう。

執筆:ゆっくり救急医
参考:日本アレルギー学会.アナフィラキシーガイドライン2022(閲覧日2022-09-08)