感染症専門医が解説「サル痘疑い患者が来たら、どうする?」

サル痘は、オルソポックスウイルス属のサル痘ウイルスによる感染症で、日本では感染症法上の4類感染症です。1970年にヒトでの感染が発見されて以来、中央アフリカから西アフリカにかけて流行していました。2022年5月以降、これまで流行を認めていなかった欧米諸国で感染拡大をしており(2022年1月1日から6月22日まで50カ国から3413例〔死亡1例含む〕がWHOに例報告)、世界的なアウトブレイクになっています [1]。
皆様は、サル痘を疑う患者さんが受診した場合、適切に対応できますか?明日からの診療に役立つように、感染症専門医がサル痘の疑いがある患者の適切なマネージメントをご紹介します。

流行地でのげっ歯類との接触、男性同性愛者での発熱と水疱などから疑う!
サル痘の主な感染源は、アフリカに生息するリスなどのげっ歯類です。流行地で、これらのげっ歯類との接触がある場合はサル痘を疑いましょう。
典型的には、サル痘はウイルスに曝露してから、通常6-13日(最大5-21日)の潜伏期間の後に発症します。発熱や頭痛、リンパ節腫脹などの症状が0-5日程度持続し、その後に発疹が出現します。皮疹の特徴は、顔面や四肢に多く出現し、徐々に隆起して水疱や膿疱、かさぶたになることです。通常、全身に発疹が認められますが、今回のアウトブレイクでは性器や肛門周辺にのみ発疹がみられた事例も報告されています。また、発熱などの全身症状が出現する前に発疹を認める事例もあります。

現在のアウトブレイクの中心は、男性と性行為を行う男性同性愛者です。そのため、男性同性愛者で発熱と水疱を認める場合は、サル痘を疑いましょう。サル痘の主な鑑別疾患は天然痘と水痘です。天然痘は、現在自然界から撲滅しています。表1に示したサル痘と水痘の臨床症状の鑑別ポイントを参考にしながら、考えていきましょう [1] [2] [3] [4]。

表1.サル痘と水痘の臨床症状の鑑別ポイント [1] [2] [3] [4]

サル痘 水痘
潜伏期間 5-21日(通常6-13日) 10-21日(通常14日)
発熱と発疹のタイミング 発疹がでる1-5日前 発疹がでる1-2日前
発疹の特徴 ・顔面から始まり体幹部へ拡大する。

・全ての発疹が、平坦→水疱→膿疱→痂皮化と同じ時相で進行する。

・手掌と足底にも認める。

・今回は、性器や肛門周囲のみに認める事例もある。

・2-4週間で治癒する。

・頭皮から始まり体幹部から四肢に拡大する。

・紅斑、丘疹、水疱、かさぶたが混在する。

・数日間で治癒する。

リンパ節腫脹 あり なし

 

サル痘を疑ったら、接触感染、飛沫感染、空気感染対策をしっかり行う!
サル痘はヒトからヒトに感染することがあります。主な感染経路は接触感染、飛沫感染の2つです。飛沫感染は、サル痘に感染した人の飛沫を浴びること。接触感染は、サル痘に感染した人の体液・皮膚病変(発疹部位)に触れることです。

また、理論的には空気感染も起こす可能性が指摘されていますが、実際に空気感染を起こした事例は確認されていません。まれですが、リネン類を介した医療従事者の感染報告があることにも注意が必要です。そのため、医療機関では、接触感染対策と飛沫感染対策に加えて、空気感染対策をおこなうことも推奨されています。これらの感染予防策は、発症後からすべての皮疹が消失し、新しい正常な皮膚に覆われるまで継続されることが推奨されています [1] [2] [3] [4] [5] [6]。

サル痘の診断のために、保健所へ連絡を行い、PCR検査のための水疱などを採取する。
サル痘は感染症法上の4類感染症なので、疑ったら保健所に相談しましょう。主に水疱や膿疱の内容液、あるいは組織を用いたPCR検査で遺伝子を検出して診断します。その他の診断方法に、ウイルス分離・同定や、ウイルス粒子の証明、蛍光抗体法などもあります。しかし、抗原検査や抗体検査は交差反応が多く、サル痘の特異的な診断が難しいです。また、2022年6月時点で、日本ではコマーシャルベースでのサル痘の診断体制が整っていません。
そのため、サル痘を疑ったら、保健所と相談しながら、PCR検査に用いる水疱や膿疱の内容液、あるいは組織の検体を採取し、都道府県の地方衛生研究所や国立感染症研究所に相談します。病原体検査のための具体的な検体採取方法や保存方法は、厚生労働省の通知に記載されていますので事前に確認しておきましょう [4]。

サル痘疑い患者に、自信をもって対応出来るようになろう!
流行地でのげっ歯類との接触歴を認める場合、男性同性愛者で発熱と水疱を認める場合はサル痘を鑑別疾患に考えます。その他の主な鑑別疾患は水痘になります。サル痘の感染対策は、接触感染、飛沫感染、空気感染対策を正常な皮膚に覆えるまでおこなうことです。
サル痘を疑ったら、保健所へ連絡を行い、確定診断に用いるPCR検査のための水疱や膿疱の内容液を採取し、都道府県の地方衛生研究所や国立感染症研究所等と相談します。本記事を参考に、サル痘疑い患者に、自信をもって対応出来るようになりましょう。

参考文献:
[1] WHO. Disease Outbreak News (DONs). https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news. アクセス日:2022年6月29日
[2] 国立国際医療研究センター病院. サル痘のファクトシート. http://dcc-irs.ncgm.go.jp/material/factsheet/monkeypox.html. アクセス日:2022年6月29日
[3] 国立感染症研究所. サル痘とは. https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.html. アクセス日:2022年6月29日
[4] 厚生労働省. その他の感染症. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou19/index.html?fbclid=IwAR3lhZfkYljjPL0OZtwjWkj-tLwNQ-HdeQtzcCiCRtLCiH15oXLAIJ6kpSQ. アクセス日:2022年6月29日
[5] CDC. Monkeypox. https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/index.html. アクセス日:2022年6月29日.
[6]. ECDC. Monkeypox. https://www.ecdc.europa.eu/en/monkeypox. アクセス日:2022年6月29日

執筆:Lemon@感染症