男性にも起こりうる更年期障害とLOH症候群について

中高年の方からの「最近疲れが取れない」「やる気が出ない」といった相談、聞いたことはありませんか?原因は、男性更年期かもしれません。

男性にも更年期障害があることについては、あまり知られていません。中高年男性の加齢にともなう身体的、精神的な症状を男性更年期と呼び、中でもテストステロンの分泌低下によるものはLate-Onset Hypogonadism(LOH)症候群と呼ばれています。

今回の記事では、以下のことを説明します。
・テストステロンの働き
・男性更年期とは
・Late-Onset Hypogonadism(LOH)症候群について
・男性更年期の治療法

ストレス世代と呼ばれる中高年層の生活にもかかわる男性更年期について、理解を深めましょう。

テストステロンの機能と加齢にともなう変化
男性ホルモンは、アンドロゲンとも呼ばれるホルモン群の総称です。アンドロゲンの中で男性更年期に大きな役割を果たす男性ホルモンはテストステロンです。テストステロンの約90%は精巣で産生され、さまざまな生理作用を持っています[1]。体内で、テストステロンは以下のように働きます。

臓器 作用
性欲などの精神作用
腎臓 エリスロポエチンの分泌
筋肉 筋肉量の維持・増加
皮膚 皮脂産生
子続い 造血作用
脂肪 脂肪の燃焼
生殖器 性機能 造精機能

個人差はありますが、テストステロンは20代をピークに、50歳を過ぎると年1%の割合で徐々に減少[2]。症状をともなうテストステロン減少には対処が必要です。

男性更年期とは
男性更年期の中でも、テストステロンの低下にともなうものがLOH症候群です。ここでは、男性更年期について詳しく解説します。

男性更年期の症状
男性更年期の症状は、身体症状・精神症状を含めさまざまです。以下のような症状があらわれます。
・性機能症状
・勃起障害 性欲の低下
・身体症状
・発汗、ほてり
・精神症状
・抑うつ 無気力

患者さんにとって、自分の症状が男性更年期によるものか、さらにはテストステロンの減少によるものか判断するのは難しいでしょう。診察する医師も、患者さんの症状から男性更年期の可能性を考える必要があります。

男性更年期の診断とLOH症候群について
男性更年期は加齢、ストレス、生活習慣病、テストステロン低下など、たくさんの要素がかかわっています。しかしLOH症候群は、テストステロンの補充によって症状の改善が期待できる病気です。LOH症候群はLate-Onset Hypogonadism(加齢性男性性腺機能低下症候群)の略で、加齢にともなうテストステロンの低下に基づく症候群と定義されます[1]。

LOH症候群の診断
LOH症候群の診断のためには、血中のテストステロン測定が必要です。また、17個の質問からなるAging males'symptoms(AMS)スコアを用いて心身の状況を評価[3]。血中遊離テストステロン値が低く、AMSスコアからもLOH症候群が疑われる場合は治療の対象となります。

男性更年期の治療「アンドロゲン補充療法」
LOH症候群に対しては、エナント酸テストステロン(エナルモンデポー®)の注射や胎盤性性腺刺激ホルモン(hCG)の注射、男性ホルモン軟膏塗布によるアンドロゲン補充が可能です。一方で、アンドロゲンは多くの臓器や組織に作用するため、補充の際には注意しましょう。たとえば前立腺がんの場合、アンドロゲンの補充はがんを進行させる可能性があります。

 

男性更年期の診察・治療|よくある質問Q&A
男性更年期についてよく聞かれる質問について、回答します。

Q:元気が出ないんですが、とりあえずメンズヘルス外来に行けばよいですか?

A:かかりつけの医師を受診し、内科疾患や精神疾患がないことを確認しましょう。その上で男性更年期を疑う場合にはメンズヘルス外来を紹介してください。日本Men'sHealth医学会のWebサイトでは、診察可能な医療機関の検索ができます[4]。

Q:テストステロン補充はどのようにおこなうのですか?
月2回の筋肉注射による補充が、保険治療で認められています。海外ではテストステロンの経口薬も利用可能ですが、日本では承認されていません。

Q:アンドロゲン補充療法以外の治療法は?

A:生活習慣の改善やカウンセリングをおこないます。また、症状に応じて漢方や抗うつ薬、勃起不全をともなう場合にはバイアグラ等のPDE-5阻害薬を使用することも。専門医に相談のうえ、適切なアドバイスを受けてください[5]。

男性更年期を理解し中高年男性のQOL向上を
この記事では、男性更年期について説明しました。日本は超高齢化社会を迎え、男性更年期を理解し治療することは社会にとっても重要といえるでしょう。意外に知られていない男性更年期を学び、治療に役立ててください。

執筆:サラリ医マン@泌尿器科

【参照】
[1] 日本泌尿器科学会/日本Men’s Health医学会「LOH 症候群診療ガイドライン」検討ワーキング委員会, 加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き, 2007
[2] 岩本晃明, 日本人成人男子の総テストステロン,遊離テストステロンの基準値の設定, 日泌会誌 2004;95:751-760
[3] Heinemann LA, Zimmermann T, Vermeulen A, et al:A new ʻAging Males’ Symptoms’(AMS) rating scale. Aging Male 2:105−114, 1999.
[4] 日本Men'sHealth医学会 https://www.mens-health.jp
[5] 岩本晃明, 加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)をどのように理解し対処すべきか テストステロンの役割, 総合健診 2012; 39-6: 771-777