[肺がん座談会] 切除不能3期非小細胞肺がん治療戦略

切除不能3期非小細胞肺がん治療戦略

さて、今回は「肺がんコミュニティ」における肺がん治療戦略について、複数の先生に本音で語っていただきました。その内容を座談会記事としてお届けいたします。

現在の切除不能3期非小細胞肺がんはPACIFIC試験の結果[1]より、肺がん診療ガイドラインにおいても推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:Bと記載があり、同時化学放射線療法後に、デュルバルマブによる地固め療法を行うよう推奨されています[2]。

現在他の先生はどのように感じていらっしゃるのでしょうか。そこで今回は切除不能3期非小細胞肺がん治療戦略に関して複数の先生にお話を伺いました。

呼吸器内科医 心拍(以下 心拍)(@dr_shinpaku
関東近郊の市中病院で勤務医をしている10数年目の医師になります。日頃から肺がん診療の進歩についていくのがやっとという状況です。

呼吸器内科医 tomisuke先生 (@nextommysuke)(以下 tomisuke)
関東の腫瘍専門施設に在籍する中堅の呼吸器内科専門医です。胸部悪性腫瘍に関しては多数の症例を経験しております。

江口 真澄先生(以下 江口)
放射線治療医です。現在は関東の大学病院に勤務しています。肺癌としては1期と3期の治療に携わっています。よろしくお願いします。

キュート先生(@cutetanaka)(以下 キュート)
肺がんを専門に診療しています。よろしくお願いいたします。

呼吸内科医チラ先生(以下 チラ)(@mdchin_chiiiira
呼吸器内科を専門にする若手から中堅に差し掛かる世代です。これまで2次救急総合病院でしばらく肺癌診療にも多く携わってきました。

呼吸器内科医A先生(以下 A)
呼吸器内科専門医、がん薬物療法専門医として、関西地方で肺癌を中心に臨床業務に従事しています。

呼吸器外科医mfj先生(以下 mfj)
10年前後の呼吸器外科医です。JCOG肺がん外科グループ会議に参加しております。肺がんの周術期治療や術式など、今後もパブリッシュされる、また新しく承認されるものも情報が少し早く入ってくる状況ですのでそれをもとにお話できればと思います。

心拍:経験症例数はまだ少ないのですが、3期のケモラジ後ICIを数例経験して、ケモラジ後すぐにICI入れるので、遅れて放射性肺炎が悪化しているか薬剤性肺炎なのか微妙な感じでどちらにせよあまり継続できないことが多いのですが、皆様はあまり治療に困ったりはされないでしょうか?早々にステロイド入れて再投与期間内までステロイド減量して再投与とするのが良いのかもですが。。。

このあたり放射線治療科の先生にお世話になることが多いです。放射性肺炎の範囲が放射線照射内か外かで変わるということもあり…論文ではあったかと思いますが、ガイドラインとかにははっきり記載がなく悩ましいところです。

キュート:なるべくケモラジ終了直後にCT評価し、PDでなければデュルバルマブです。放射線科の先生に照射野を確認することは必須になりますね。下記の記事も参考にしてみてください。
デュルバルマブ地固め療法、肺臓炎リスクをRWDで検証|肺がん注目論文徹底検証|連載・特集|Medical Tribune (medical-tribune.co.jp)

tomisuke:基本的に照射範囲内であれば放射線性肺臓炎と判断することが多いです。ステロイドの適応はCTCAEグレード1なら経過観察、2以上なら0.5-1.0mg/kgのPSLを始めて、10mgまで減量しても安定していれば投与再開、というやり方で自分はやってます。

心拍:ケモラジ終了直後にCT撮影しています。その時には放射性肺炎はないのでデュルバルマブ投与までは行くのですが、その後…後から放射線肺炎が顕在化してきてみたいなケースが…。

PSL10mgまで減量するのに時間がかかってしまうケースなどはどうしていますでしょうか?確か臨床試験でも期間が定められていて、それ以上だと再開はしないとしていたかと思います。

キュート:はい。ステロイドまで始まってしまったケース(主にGrade3以上)ではなかなかデュルバルマブの再開はできません。CRIMSON試験でもたしか肺臓炎で中止した症例のデュルバルマブ再開でまた半数が増悪したとされています。

あくまで「地固め」の位置付けですので。あまりに攻めすぎると‥のちのちⅣ期の治療も入り難くなってしまう可能性があります。

江口:放射線治療後の肺臓炎って治療直後は出てなくても体感的には3-4ヶ月までは起こって、治療後半年とかするとほぼ起きないかなという印象です。うちの呼吸器内科の方針は控えめで、呼吸器症状のない肺臓炎Grade1でもICIが入らないので、将来的に肺癌治療成績が他県と比べて劣後するんじゃないかと危惧しています。

キュート:はい。多くのオピニオンリーダーの先生方もそのストラテジーですよね。実際は患者さんの元気さとか酸素が不要になるかとか、肺臓炎の範囲とか、10mgまでどのくらいの期間で下げられたかとか様々なことを考えちゃいます。ステロイド使いながらのデュルバルマブにどれだけ効果を期待していいか‥も製薬会社の忖度ないところで議論して欲しいです。

Ⅲ期ケモラジデュルバルマブ‥の話題はこの3年くらいでひたすらやりましたのでやや飽きた感じがあるのですが。まだまだ議論の余地はありそうですね。

Ⅲ期はケモニボ→オペ、オペ後アテゾもありますので、ぜひ放射線科の先生や外科の先生のご意見もお伺いしたいところです。

チラ:私は先生方ほどの知見をもっていないと思い恐縮ですが、Ⅲ期のケモラジ終了時点でCT撮影しSD以上であれば早期デュルバルマブ入れてます。

浸潤影出現の際は、放射線科と協議して照射範囲野内で矛盾しない陰影に関しては、放射性肺臓炎として対応してます。

実際にPSLを使用すると、再燃のリスクを考えて減量は慎重になっており、特に20mg以下から慎重に刻まれることが周りでも多く、大体10mgまで減らすのに最低2ヶ月はかかってます。他施設の先生方の、PSL漸減スケジュールや、逆にどれほど早く減量したら再燃したかなどのご経験も気になります。

心拍:Grade 2の放射性肺炎に対して、PSLは30mg(0.5mg/kg/day)で始めることが多く、基本的には2週間毎に陰影が改善傾向であれば、30→25→20→15→12.5→10mg/と減らしていきます。そして20mg/日から先が確かに2週間ですぐに減らせずに時間が経過してしまうことがありますね。

A:皆様とほぼ同じ意見ですが、G1ではデュルバルマブを継続、G2になればしっかりステロイドを入れることが大切かと思います。放射線肺臓炎は一過性なので、V20なども参考にそこでひるまずデュルバルマブを継続することが大切かと考えています。

実地臨床では、III期でケモラジ後にデュルバルマブを行くのかオペに行くのかという点も議論になるところかと思います

江口:一定数治療してると、慎重に慎重に漸減して行っても、再燃→寛解→再燃を繰り返す症例にあたって、放射線を当てたことを後悔することがあります。

キュート:外科の先生がラジ後のオペがやはり難易度が上がるとのことで、オペありきであれば今後はニボケモが主流になるのかと思っています。https://medical-tribune.co.jp/rensai/2022/0528545513/

ⅢBやmultiple N2でオペ困難+ラジ可能‥という症例に限られてくるのでしょうか‥?

心拍:まだケモラジ後にオペの症例を経験したことがなく、このあたり知見をお伺いしたいです。

mfj:Ⅲ期は今後ICIとEGFR-TKIが周術期のメインになりそうですね。術後よりは術前ICIの方が効果が高そうなので、術前ニボが承認されたらかなり使われると思います。ケモラジ、特にラジが入ると手術は難しくなりますね。線維化も強くなりますし。放射線治療を入れるなら局所進行癌などが想定されると思います。

現在進行している放射線治療に関連した試験ですと、
squat試験
https://rctportal.niph.go.jp/s/detail/um?trial_id=JapicCTI-195069

JCOG DEEP OCEAN試験
https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs031190223

などがあり、これらの結果に期待しています。

A:III期は施設によりかなり治療に幅があるところなので、この試験の結果を私も楽しみにしています。現在の病院では、外科の先生が「ケモラジ後はデュルバルマブよりオペ」という感じのスタンスですね。

キュート:それ、分かります。

江口:この試験、手術を念頭に放射線は50Gyで終わりにしてるので周術期のトラブルはかなり減らせそうですね。

mfj:私の施設は切除可能なら基本的に手術していますね。単純比較はできませんがCM816のOSなどは驚異的だと思います。あとは治療効果判定が病理学的にちゃんと出来るのも良い点だと思っています。

いずれも外科医が主導した試験なので、その点も考慮されたエビデンスが日本から出てくる事は、非常に楽しみな領域です。

3期化学放射線治療後のデュルバルマブ投与について

呼吸器外科医B(以下 B)
地方で呼吸器外科をしている若手です。肺癌については手術はもちろん、進行期の薬物療法も外科が行っている病院で働いていますので、色々勉強させて頂きたいです。よろしくお願い致します。

呼吸器内科医C(以下 C):急性期病院をローテーションしている若手です。肺癌を始め、呼吸器診療を勉強していければと思っております。

ちょうどASCOでも、デュルバルマブ地固めのILDリスク因子検討のポスターが、広島の先生方から出てました。
https://meetings.asco.org/abstracts-presentations/207477
10施設148例の後ろ向きの多変量解析ですが、デュルバルマブ投与前CTの軽微な間質性陰影(ILA)が、ILDのリスク因子になっている(特にすりガラス陰影はオッズ比6.29)という結果でした。

それにしてもデュルバルマブ投与中にGrade2以上のILDが38%って、こんなにも出るものとは知りませんでした。148例中、Grade1も含めたILD発現が94例(63%)、デュルバルマブ中止は54例(36%)です

逆に言えば、64%はなんとか完遂したという感じでしょうか。

心拍:デュルバルマブ148例すごいですね。市中病院なので、たぶん施設全体でもまだ20-30例くらいかなという印象です。デュルバルマブを完遂できた方、いたのかな…という印象ですが皆さまの施設ではいかがでしょうか。

B:当院では20例ほどCRT→デュルバルマブ症例がありまして、やはりILDは多い印象です。ただ完遂も6例いて、完遂できた方は皆さん奏功している印象です。

心拍:1/3くらいですね!

キュート:デュルバルマブ完遂率はだいたい半分くらいですね。

江口:55例で検討しましたが33%完遂、40%途中休止、残りは施行できずでした。

C:正確には数えられてないのですが、大体完遂は半分程度の印象です。また完遂した人でも2週ごとがきつくて1ヶ月おきとかで一応完遂した方もいらっしゃしました。

mfj:デュルバルマブは他のICIより有害事象が強く、完遂できない印象でしょうか。今後術後のアジュバントで、アテゾリズマブが1年間入る方も多くなるのですが、内科の先生はどう思われますか?

心拍:それほど使用経験数がないので感覚的ですが、デュルバルマブを使用するのがSCLCの1st lineでPDになってしまうので副作用で中止というケースが多いわけではなく、
また、3期ケモラジ後のデュルバルマブは放射性肺炎後に早期にステロイド減量できずに再開できない印象なので、デュルバルマブ単体で継続しにくいのかどうかなんとも言えない感じを抱いています。

放射線治療が入らない治療の中でのICI投与という点では、1年程度PDにならずにICIを投与した症例で言えば半数以上は副作用なく継続できている印象です。もちろんPDになっていないという中でなのでまた印象論とはなってしまいますが…

3期のケモラジ後のデュルバルマブが使えるようになる前の3期のケモラジ症例はそれほど経験がなく、デュルバルマブ使用の有無による放射性肺炎の差などもあまりわからないのでみなさんの感覚はどんなイメージでしょうか。

江口:2017年以前の自験例で恐縮ですが、41人中肺臓炎grade1は70〜80%、grade2は15%、grade3以降は数%という感じでした。最近は放射線の当て方もIMRTが普及してきてこの数字よりは改善あるかと思います。

パシフィック試験ではプラセボ群における重篤な有害事象22.6%、うち肺臓炎は3.4%とあるので体感的にもそんなもんかなあという印象です。

心拍:ありがとうございます。放射線治療の進歩もありますもんね。

チラ:Ⅲ期のケモラジ後のデュルバルマブ症例は、私自身の症例は1桁台ですが完遂例はなかったかと記憶してます。途中で投与中止またはPDになってしまいました。

A:デュルバルマブ地固め療法、肺臓炎リスクをRWDで検証したCRIMSON試験がありますね。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34543942/

キュートhttps://medical-tribune.co.jp/rensai/2021/1213540484/
ご参考までにこちらもご覧ください。

tomisuke:放射線性肺臓炎で投与中断に至る実際の割合については各施設の自験例数がRWDなのだと思います。CRIMSONについても重要なデータですね。

tomisuke:話題に上がっている、CRT→デュルバルマブの治療を受けた症例において、再発が起こった場合にどの治療を用いるべきか、というのはひとつのクリニカルクエスチョンだと思っております。

純粋な二次治療としてDTXでいくのか、再発初回治療としてプラチナを使うのか。またそこにICIを加える意義についてどのように考えるか、各施設の先生方のお考えを伺いたいです。

すべてはどのタイミングでの再発なのか、に尽きると思いますが。。。
自施設では、CRTのChemo最終投与から十分な時間(≒6ヶ月)が経過していればプラチナの投与を許容しています。

ICIについては、デュルバルマブの投与中や投与終了直後の再発であれば乗せないことが多いですが、CTLA-4を使う機会を逸しないようになるべく乗せたいとは思っています。

心拍:まだあまり経験がないので今後そうなったらという考えですと、半年経過していたらプラチナベースの化学療法、少し待てる状況であれば待ってからの投与も検討すると思います。

ICIについては、ICI(PD-1/PD- L1阻害薬)は再投与となってしまうのでどうなのかな?と思う反面、 CTLA-4をどう使うのかは不勉強でわからないです。

チラ:CRT→デュルバルマブ後の再発ですが、ICIは入れてないです。tomisuke先生と同じく、半年ほど経過していた場合はプラチナが入れられる状況であれば入れております。入れられない場合や早い再発時はDTXレジメン使用してます。

CTLA-4に関しては私自身の使用経験が乏しく、不勉強となっております。

C:現施設では、デュルバルマブ後の再発としても特に禁忌や問題がなければ再発としてChemo+ICIを入れてました。9LAレジメンに関してはその状況での使用経験はまだありません。

心拍:先生方、それぞれの視点でコメントいただきありがとうございました。切除不能3期非小細胞肺がん治療戦略について、内科・外科・放射線治療科といった様々な診療科の先生のご意見を伺い、またディスカッションをしていただき大変勉強になりました。ありがとうございました。

(敬称略)

執筆:Dr.心拍

参考
[1] N Engl J Med. 2018 Dec; 379(24):2342-50
[2] 肺癌診療ガイドライン2021年版 (haigan.gr.jp)