イグラチモドがイマイチなNSAIDsから抗リウマチ薬へ開発された経緯とは?

意外なところで発見された薬剤を紹介 その②
日常的に使っている薬剤が、意外なところや経緯で見つかったものであることを知っていますか。「もともと毒ガスだったものも!? 意外なところで発見された薬剤を紹介」では、エンドキサン®️とプラケニル®️を紹介しました。

今回は、関節リウマチの適応がある薬を紹介します。イグラチモド(ケアラム®️)とオーラノフィン(リドーラ®️)の2つです。

イグラチモドは関節リウマチの治療薬
イグラチモドは、関節リウマチのアンカードラッグであるメトトレキサートの上乗せ効果があることが明記されています。また、同じ抗リウマチ薬のサラゾスルファピリジンと有効性は劣らなかったとの証明もあります。イシヤクに記載している情報は以下です。

 

イグラチモドは当初、NSAIDsとして開発された
イシヤクにも記載されているように、イグラチモドは当初NSAIDsとして開発されました。その後イグラチモドは、炎症部位選択的なプロスタグランジン(PG)合成阻害作用を有するNSAIDsとして1991年に見出されます[1,2]。イグラチモドには、選択的COX-2阻害作用がありました[3]。しかしCOX-2阻害およびPG産生抑制作用は、インドメタシンのそれぞれ約1/60および1/10と極めて弱いものです。
イグラチモドがイマイチなNSAIDsから抗リウマチ薬へ開発された経緯
NSAIDsとしての効果はイマイチでしたが、薬理作用としてIL-1やIL-6、TNFαなどの炎症性サイトカインの産生を抑制することが実験で判明しました[4]。その後、プラセボコントロール試験[5,6]で関節リウマチへの有効性が証明され、2012年9月に抗リウマチ薬として販売されています。

イグラチモドの現在の役割
現在、イグラチモドは、日本の関節リウマチガイドライン[7]やアジア太平洋リウマチ学会ガイドライン[8]で、関節リウマチ治療薬として推奨されています。処方の事例をあげて紹介します。

事例紹介
70歳、男性。数ヶ月前より両手手指の関節が腫れてきたとのことで受診した。受診時、理学所見でも関節腫脹を認める。高血圧性腎障害(eGFR-Crea: 40ml/min)が指摘されており、高齢者でもあることも鑑みてメトトレキサートでの治療は困難と判断。イグラチモド25mg/日で治療を開始した。

実臨床では、事例のようにアンカードラッグであるメトトレキサートが使用困難な症例に治療薬として使用します。

メトトレキサートが使用困難なコモンなケース
1.腎機能障害(eGFR<60ml/min/1.73m2から慎重投与、<30は禁忌)
2.MTXが継続できない(消化器症状や肝障害など)
3.活動性の間質性肺炎合併
4.高齢者(禁忌はないが副作用が強くでるおそれがあり慎重に使用)

オーラノフィンは抗リウマチ薬として開発された
オーラノフィンは、1972年に経口の抗リウマチ薬として発表され注目されました[9]。日本において、二重盲検試験により有効性と安全性が確かめられ[10]、1986年に販売開始となりました。最近では、オーラノフィンの抗腫瘍効果が注目を浴びています。ここでは、現在でありうる処方事例も踏まえて紹介します。
現在、オーラノフィンは関節リウマチ治療では推奨されない
メトトレキサートが関節リウマチの標準治療となるまでは、数少ない抗リウマチ薬としてオーラノフィンは使用されていました。イシヤクでも記載のあるように日本・海外のガイドライン[7,8]では、もう推奨されていません。

現在で処方されうる事例を紹介します。

事例紹介
77歳、男性。30年前に関節リウマチを発症し、オーラノフィン6mg/日で治療を開始。関節腫脹は改善し、以後継続されていた。継続受診希望で当科に紹介受診となったが、腫脹・圧痛関節を認めず。炎症反応も鎮静化しており関節リウマチは寛解していた。そのため、オーラノフィンを継続。

事例のように、以前から処方されて関節リウマチが落ち着いている症例に使う程度です。
オーラノフィンは、抗腫瘍効果が注目されている!?
オーラノフィンは金原子を含んでおり、チオレドキシン(Trx)還元酵素を阻害する作用をもっています。がんにおけるTrxシステムの重要性が注目されており、Trxシステムを阻害することで腫瘍増殖を抑制する戦略が考えられています。現在、白血病(NCT01419691)、肺がん(NCT01737502)、卵巣がん(NCT01747798, NCT03456700)、再発性膠芽腫[11]に対してオーラノフィンので臨床試験が実施中です。
薬剤にも塞翁が馬
イグラチモドは、NSAIDsとして開発されたものの効果はイマイチでした。しかし、別に抗炎症作用が見出され、現在は抗リウマチ薬として使われています。オーラノフィンは、抗リウマチ薬として開発されていますが、現在のガイドラインでは推奨されていません。一方で、抗がん作用の臨床研究が現在進められています。

COVID19治療でみられるように、既存の薬剤を新規に治療応用するといったDrug Repositionが最近はさまざまな疾患でおこなわれています。今は使われない薬剤も、新たな目的で使用する機会がでてくるかもしれません。まさに塞翁が馬(世の中でおこることは予測できない)ですね。

執筆:MajorTY@膠原病内科

[参考文献] [1]Pharmacological studies of the new antiinflammatory agent. 3-formylamino-7-methylsulfonylamino-6-phenoxy-4H-1-benzopyran-4-one. 1st communication: antiinflammatory, analgesic and other related properties.
[2]Pharmacological studies of the new antiinflammatory agent 3-formylamino-7-methylsulfonylamino-6-phenoxy-4'-1-benzopyran-4-one. 2nd communication: effect on the arachidonic acid cascades.
[3]T-614, a novel antirheumatic drug, inhibits both the activity and induction of cyclooxygenase-2 (COX-2) in cultured fibroblasts.
[4]Pharmacological studies on 3-formylamino-7-methylsulfonylamino-6-phenoxy-4H-1-benzopyran-4-one (T-614), a novel antiinflammatory agent. 4th communication: inhibitory effect on the production of interleukin-1 and interleukin-6.
[5]Efficacy and safety of iguratimod compared with placebo and salazosulfapyridine in active rheumatoid arthritis: a controlled, multicenter, double-blind, parallel-group study.
[6]Concomitant iguratimod therapy in patients with active rheumatoid arthritis despite stable doses of methotrexate: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial.
[7]日本リウマチ学会. 関節リウマチ診療ガイドライン2020, 診断と治療社, 2021.
[8]2018 update of the APLAR recommendations for treatment of rheumatoid arthritis.
[9] 関節リウマチの治療 薬物療法 有用性と副作用対策を中心に 金製剤、D-ペニシラミン.
[10]慢性関節リウマチに対する経口金薬Auranofinの薬効検定.
[11]A phase Ib/IIa trial of 9 repurposed drugs combined with temozolomide for the treatment of recurrent glioblastoma: CUSP9v3.