パーキンソン病のDevice-aided therapy:2つの外科的治療を知っておこう!

パーキンソン病(PD)は、脳神経内科が扱う代表的な神経難病のひとつです。PD患者は運動機能の障害を呈し、治療は主に内服薬にておこなわれます。しかし、内服治療が長期にわたると、病気の進行とともに症状コントロールが困難になっていき、さまざまな運動合併症が出現します。

そこで近年、進行期PD患者さんに対し、デバイスを用いた治療(Device-aided therapy:DAT)をおこなうことが増えてきました。2022年9月現在、DATには脳深部刺激術(DBS)、Levodopa/carbidopa intestinal gel(LCIG)、アポモルフィンポンプの3つの選択肢がありますが、本邦で使用可能なDATはDBSとLCIGの2つです。今回は、進行期PDに対しておこなわれるDBSとLCIGの2つの外科的治療についてご紹介しましょう[1]。

PDに対する内科的治療には限界がある
PDは主に運動機能に障害が出る疾患です。4大運動症状として振戦、固縮、無動、姿勢反射障害があります。PDは中脳黒質のドパミン神経細胞が減少し、ドパミンが欠乏することで発症します。そのため、PD治療において最も有効な薬剤は、ドパミンを補充するレボドパ製剤です。レボドパ製剤は中枢でドパミンに変換されます。

では、どのようにドパミンは運動機能を調節しているのでしょうか?通常、ドパミン神経が神経終末へのドパミン放出をコントロールすることで、運動機能を調節しています。しかし、進行期のPD患者ではドパミン神経がかなり減少しているため、補充されたドパミンはセロトニン神経から容易に放出されるようになります。その結果、神経終末でのドパミン量が安定せず、症状の変動が激しくなるのです。

このような現象は運動合併症と呼ばれ、ドパミン量が多ければジスキネジアという不随意運動が出現し、少なければウェアリングオフという運動機能低下を招きます。運動合併症の出現が進行期PDでは大きな課題となっており、内科的治療ではコントロールが困難です。そこで運動合併症の改善のために、DATの導入を検討します。

PDに対するDATの導入目安は?
PD患者にDATを導入するおおまかな目安には、次のようなものがあります[2]。
 ①1日の経口内服薬の服用回数が5回を超える
 ②1日当たりのオフ時間が2時間以上ある
 ③コントロール不良なトラブルサム・ジスキネジアが1時間以上ある
ここで2つのDAT(DBS、LCIG)について、それぞれの特徴を見ていきましょう。

DBSは脳外科手術により電極を入れる
DBSは、PDの運動症状に深くかかわる大脳基底核経路の視床下核や淡蒼球内節などを電極で刺激することにより、運動合併症を改善させる治療です。

電極の挿入には、脳外科医による定位脳手術が必要です。電極刺激は基本的に24時間継続し、左右の症状の違いや病気の進行にあわせて刺激条件を調整できます[3]。刺激装置は前胸部や腹部に埋設しますが、最近は充電式のものがあり、14年以上の継続使用が可能です。

DBSの効果は2つあるといわれています。一つ目は「底上げ効果」と呼ばれるもので、運動機能のオフ時間を減らし、オンの時間を延長する効果です。二つ目は「肩代わり効果」と呼ばれるもので、抗PD薬の副作用が強いために十分に内服できない患者に対し、薬の肩代わりをして、治療効果をもたらすというものです。

DBSの問題点としては、認知機能や精神症状への影響が報告されており、高齢者への導入は慎重におこなう必要があります[1]。

LCIGは内視鏡手術により消化管にチューブを入れる
運動合併症の原因のひとつとして、ドパミン血中濃度の不安定さがあげられます。LCIGは、レボドパの吸収部位である空腸にポンプで持続的に薬剤を注入することにより、血中ドパミン濃度を安定させ、ジスキネジアやウェアリングオフを減らします。

LCIGのメリットは、認知機能への影響が少ないことや、内服を減らせることです。一方でデメリットは、胃瘻造設のため内視鏡手術を受けなければならないことや、ポンプ操作・チューブの洗浄が必要なことです。ポンプ操作やチューブの洗浄は煩雑な操作のため、高齢者では介護者の協力が望ましいでしょう。また、チューブトラブルや瘻孔の皮膚トラブルが生じることもあり、消化器内科や皮膚科との連携が必要なケースがあります。

DBSとLCIGのどちらを選択すべきか?
DBSとLCIGは、どちらも運動合併症の改善に大きな期待ができる治療方法ですが、DBSとLCIGにはどのような違いがあるのでしょうか。中島らは、表のような違いを挙げています[4]。

LCIG

DBS
視床下核 淡蒼球内節
運動合併症の改善
ジスキネジア抑止
薬物の減量 ×
精神症状の合併 少ない やや多い やや少ない

中には、LCIGとDBSを併用して効果的だった症例もあり、患者個々の状態をみて、判断する必要があります。

次世代のDATと外科的治療
今回は、PDに対するDATについてご紹介しました。進行期PD治療は、今後も発展していく可能性があります。

LCIGに関しては胃瘻造設とチューブトラブルが大きな課題となっていますが、2022年9月現在、胃瘻を必要としないポンプ式の皮下注製剤の開発が進んでいます。また、MRIガイド下超音波破砕術(FUS)といって、外科的手術をせずに脳内の視床中間腹側核を破壊するという治療が適応となりました。

さらに、ドパミンを補充する方法として、アデノシン随伴ウイルスを利用し、ドパミン合成に必要な酵素を移植する遺伝子治療やiPS細胞由来のドパミン前駆細胞を線条体に移植する外科治療も治験が進行中です。治療を断念せざるを得なかった進行期PD治療に今、注目が集まっています。

文責:エスディー@脳神経内科

[1] 日本神経治療学会治療指針作成委員会. Parkinson病のdevice aided therapy. 神経治療. 2018, vol.35, No. 5.
[2] Odin P. et al. Collective physician perspectives on non-oral
medication approaches for the management of clinically relevant unresolved
issues in Parkinson's disease: Consensus from an international survey and
discussion program. Parkinsonism Relat Disord. 2015 Oct;21(10):1133-44.
[3] 渡辺充ら. DBS. Clinical Neuroscience. 2020, vol.38, no.7: 904-906.
[4] 中嶋ら. Duodenal levodopa infusion治療. Clinical Neuroscience. 2020, vol.38, no.7: 896-898.