現場からみる、新型コロナウイルス感染症の状況について(2022年4月時点)

司会「本日は、2022年4月時点の新型コロナウイルス感染症に関して、医療現場より専門の異なる先生方から座談会形式でご意見を伺いたいと考えております。今回は感染症専門医のA先生(以下A)、外科専門医のB先生(以下B)、小児科専門医のC先生(以下C)にお越しいただきました。よろしくお願い致します。」

■新型インフルエンザ等感染症であることのメリットは拡大防止・転院搬送、デメリットは費用・隔離期間
司会「早速ですが新型インフルエンザ等感染症であることのメリットは何でしょうか?」

A「全例報告や全例隔離があるため感染拡大防止につながること、医療機関としては入院調整を行政が担当してくれることをメリットとして考えています。」

B「私も同じ意見です。コロナ病床を持たない病院の入院患者のコロナ感染時の転院搬送などは非常にスムーズにすすんでいます。また、全数把握できることで、国民に感染拡大の危機感を持たせることができていたと思います。」

A「 特別対応がなくなるのであれば、公衆衛生的には全数把握の代わりの何からのサーベイランスが必要になるかと考えます。」

司会「次に新型インフルエンザ等感染症であることのデメリットはありますでしょうか?」

A「発生当時は新興感染症ということで全額公費での医療負担でしたが、そろそろ保険診療でよいのではないかと考えています。」

B「私も同意です。ワクチンを除くコロナ診療は保険診療で良いと思います。また、濃厚接触者の待機期間が長いこと、つまり最終接触から7日間、つまりトータル17日間の隔離も短縮して欲しいと考えています。」

A「陽性者は陽性日から10日間なので、陽性者よりも濃厚接触者の方が隔離期間が長くなるんですよね。」

A「感染力が高いオミクロン株では、出勤できない医療従事者も増えてしまい医療逼迫につながりました。政府は医療機関と本人がOKならば、抗原検査などを行って濃厚接触者でも出勤してもよい、という方針をだしています。」

 

■新型コロナウイルス感染症による手術件数への影響、レムデシビル治療の有効性、2類相当扱いの是非について
司会「それでは、新型コロナウイルス感染症で医療現場はどう変わったのでしょうか?」

B「感染拡大時は、コロナ病棟へのコメディカル人員流出による病床数の削減の影響で全体として手術件数を減らさざるを得ない状態になることもありました。」

A「手術件数が減少したんですね。」

B「ただ、総合病院や大学病院においては我々の扱う『がん』は手術優先度が高いので、大幅な減少はないように感じています。第6波では重症例が少なかったこともあり、病床逼迫による手術延期がなかったように思います。患者本人の感染が今は一番の延期要因かもしれません。」

A「治療について当初は手探りでしたが、最近はエビデンスに基づいて、重症化予防を目的とした新しい治療薬が日本でも使用できるようになりました。」

A「具体的には、中和抗体療法(カシリビマブ/イムデビマブ、ソトロビマブ)、内服薬(モルヌピラビル、ニルマトレルビル/リトナビル)などがあります。ただし、ニルマトレルビル/リトナビルは相互作用が多い事が問題です。」

A「オミクロン株感染当時に問題になったBA.1に対しては、より予防効果の高いソトロビマブやニルマトレルビル/リトナビルが使用されていましたが、現在問題になっているオミクロン株BA.2に対してはソトロビマブの効果が低いことが報告されています。私は現在は、新たに重症化予防に適応が承認された静注薬であるレムデシビルを使用しています。」

司会「では、医療現場から見た、今後の新型コロナウイルス感染症の取り扱いについてお願いします。」

C「小児に限れば、感染力の極めて強い軽い風邪だと感じます。インフルエンザやRSウイルスなどと比較して明らかに軽症の傾向が強いですが、子どもには感染対策や検査の負担が強いです。」

B「オミクロン株になってからは明らかに軽症で、微熱程度とか、無症状患者が多くなったと思います。」

A「高齢者は重症化する可能性が高く、新型コロナウイルス感染症そのものは軽症でもADL低下などにより医療負荷となる可能性があります。高齢者に対しては今後もこれまで同様に、積極的な濃厚接触者調査やフォローアップといった特別扱いが必要と考えています。」

A「また、今回の第6波では、これまでと異なり小児での感染拡大が目立ちました。」

司会「なぜ、今回は小児にも感染が拡大したのでしょうか。」

A「多くの要因が考えられますが、1つは小児へのワクチン接種が広がる前に、これまでよりも感染力の高いオミクロン株が流行したことです。加えて、一般的に小児は集団行動をとり、マスク着用といった感染対策にも限界があった影響が大きいのではないかと考えます。」

C「今後は基礎疾患を有するような重症化する可能性のある小児へのワクチン接種を推進した上で、遊びも勉強もなるべく正常化をお願いしたいです。マスクだけでも、乳幼児への負担は小さくありません。」

■重症化リスクのある小児への、ワクチン接種が必要
司会「最後に小児へのワクチン接種についてはどのようにお考えでしょうか。成人ほど進んでいる印象がありません。」

C「私は、適切な情報提供した上で希望する方には積極的に接種することとしています。一方、悩んでいる方や本人の注射に対する拒否が強い場合には、少し様子を見ることもよいかと考えています。」

C「ワクチンの効果と感染した場合のリスクと接種に関わる負担を天秤にかけると、他のワクチンと比べて全員に自信を持って勧めるべきか悩ましいです。」

C「ワクチンを接種したら学校などでマスクしなくて良い、といったメリットなどがあれば接種がもう少し広がると思います。」

A「現時点で、日本では目に見える形での接種後のメリットがないですよね。」

C「少なくとも乳幼児へのマスク着用は発達に関する心配も大きいので…」

B「小児の感染対策は十分なされていると考えています。それ以上に、成人の行動抑制が効かないことが原因の感染拡大や、家庭内感染の予防を再度意識付けする必要があると思っています。」

司会「小児にワクチン接種を進めるには、まだ課題がありそうですね。」

司会「まとめますと、新型コロナウイルス感染症に関して

・新型インフルエンザ等感染症であることのメリットは、全例報告や全例隔離があるため感染拡大防止につながること、入院調整を行政が担当し転院搬送などがスムーズに進むこと
・新型インフルエンザ等感染症であることのデメリットは診療費の公費による負担や、濃厚接触者の隔離期間が長いこと
・現在問題になっているオミクロン株BA.2の重症化予防には、レムデシビルが有効[1],[2] ・軽症例が中心なので、高齢者などには特別対応が必要かもしれないが、全例を2類相当として取り扱う必要はないかもしれない
・基礎疾患を有するような重症化リスクのある小児への、ワクチン接種が必要。本人や両親の意向を慎重に考える必要がある

ということですね。」

司会「以上で『現場からみる、新型コロナウイルス感染症の状況について(2022年4月時点)』を閉めさせていただきます。本日はありがとうございました。」

参考文献
[1]Takashita E, Kinoshita N, Yamayoshi S, et al. Efficacy of Antiviral Agents against the SARS-CoV-2 Omicron Subvariant BA.2. N Engl J Med. 2022 Apr 14;386(15):1475-1477. doi: 10.1056/NEJMc2201933. Epub 2022 Mar 9.
[2]Gottlieb RL, Vaca CE, Paredes R, et al. Early Remdesivir to Prevent Progression to Severe Covid-19 in Outpatients. N Engl J Med. 2022 Jan 27;386(4):305-315. doi: 10.1056/NEJMoa2116846. Epub 2021 Dec 22.

執筆:Lemon@感染症