クロストリジオイデス・ディフィシル感染症の新しい治療を知っていますか?

老人福祉施設に入所していた80歳男性の症例を紹介します。急性肺炎の診断で入院することに。ピペラシリン/タゾバクタムの投与で肺炎は軽快し、退院調整をしているところでした。しかし、ある日38℃の発熱と頻回の水様性下痢が出現。

本症例は、広域抗菌薬投与後の下痢症でクロストリジオイデス・ディフィシルによる腸炎(CD腸炎)を疑う状況です。今回は、CD腸炎治療の潮流を集中治療医が解説します。集中治療室では、易感染性の重症患者が抗菌薬治療を受けますので、CD腸炎が発生する機会も多いのです。

この記事を読むと、どんどん進歩しているCD腸炎の診療法をアップデートできます。明日からの患者診療にぜひお役立て下さい。

CD腸炎は頻度の高い医療関連感染症

クロストリジオイデス・ディフィシル感染症は、過去にクロストリジウム・ディフィシルとも呼ばれていました。医療関連感染の原因菌として、最も頻度の多い嫌気性菌に分類されます。入院患者を診る医師であれば全員が注目したい細菌です[1]。

CD腸炎のリスク

抗菌薬の連用により、腸内細菌叢の交代現象から腸炎を引き起こします。抗菌薬の使用後1か月が、CD腸炎のリスクが最も高まる時期です。その後、高リスク期間が3か月も続く可能性があるので注意しましょう。3か月以内に入院歴があれば、外来患者でも下痢の鑑別診断にCD腸炎を入れる必要があります。

CD腸炎の診断方法

下痢検体でCDトキシンをチェックし、陽性の場合にCD腸炎の診断です。臨床的に強く疑う場合はCDトキシンが陰性でも、グルタミン酸脱水素酵素(GDH)抗原陽性を確認することで治療を開始します[1]。

重症度判定

重症度の判定基準の一例ですが、軽症は以下の2点を満たす場合です。
・白血球数 <15,000/mm3
・血清クレアチニン値 <1.5 mg/dL
これ以上の白血球数あるいはクレアチニン値の上昇があれば重症といえます。ショック、イレウス、巨大結腸症を伴うものは劇症です[1]。
新しい薬剤の登場で盛り上がるCD腸炎の予防と治療
フィダキソマイシン(ダフクリア®︎)とベズロトクスマブ(ジーンプラバ®︎)をご存じですか?イシヤクアプリなら、薬剤の概要をスマートに調べられます。

フィダキソマイシン
フィイダキソマイシンについてみていきましょう。イシヤクアプリでは以下のような特徴が紹介されています。
・マクロライド骨格を有する新規の抗菌薬
・CD腸炎に適応があり、投与期間は原則10日間
・欧米ではCD感染症の標準治療薬として推奨されている

ベズロトクスマブ

では、ベズロトクスマブはどうでしょうか。以下のような特徴が紹介されています。
・トキシンBを中和するヒトモノクローナル抗体
・CD感染症の再発抑制に適応

国外ガイドラインでは新薬の推奨度が上がっている

フィダキソマイシンもベズロトクスマブも2017年に承認され、古典的な治療薬に比べると登場して日が浅い薬剤です。新薬は国内外でどのような立ち位置なのかをみていきましょう。
国内ガイドラインの推奨治療
国内での立ち位置を紹介します。

非重症 メトロニダゾール
重症 バンコマイシン
再発例 バンコマイシンあるいはフィダキソマイシン
難治例 フィダキソマイシン

引用:日本感染症学会ガイドライン(2018年)[2]

これに加えて、免疫不全患者、重症者、再発を繰り返しているなどの際にベズロトクスマブの追加を考慮していきます。

ところが、国外ガイドラインでは少し推奨が異なります。2018年の米国感染症学会ガイドラインにおける第一選択薬は、重症度にかかわらず、すべてにバンコマイシンあるいはフィダキソマイシンでした[3]。メトロニダゾールは第一選択ではなく、代替薬といった立ち位置です。

v国外ガイドラインの推奨治療

更に2021年には、米国感染症学会がCD感染症治療における最新の知見を3点アップデートしています。すべて新しい薬にまつわるものです[4]。

1. 初回患者の治療としてバンコマイシンではなく、フィダキソマイシンを提案
2. 再発患者の治療としてバンコマイシンではなく、フィダキソマイシンを提案
3. 6か月以内に再発した患者では標準治療に加えて、ベズロトクスマブの併用を提案
引用:米国感染症学会のガイドラインのアップデート(2021年)

メトロニダゾールの登場機会が減り、フィダキソマイシン、ベズロトクスマブの立ち位置が上位に来ているというのが国際的な潮流です。

集中治療医が考える治療戦略

個人的なプラクティスでも、世界の潮流同様にメトロニダゾールの使用機会が減っています。バンコマイシンでの治療は、最も多い選択です。バンコマイシンによる治療で再発した方にはフィダキソマイシンを利用することもあります。

まとめ:CD腸炎の治療は新薬の立ち位置が上昇している

医療関連感染症として最も重症なCD腸炎について集中治療医からの見解を紹介しました。現在は、国内と国外のガイドラインにギャップがあります。よって単一のガイドラインに沿って動くというよりは、個別の症例ごとに検討して新しい薬を使うというのが実際です。

今の流れをみると、CD腸炎には基本的にフィダキソマイシンをチョイスするという時代が来るのかも知れません。次回の国内ガイドラインにおけるアップデートを楽しみにしたいと思っています。

筆・大江優

[1]日本集中治療医学会教育委員会. 日本集中治療医学会専門医テキスト 第3版 (p663-6). 真興交易(株)医書出版部, 2019年.
[2]日本感染症学会 Clostridioides(Clostridium)difficile感染症 診療ガイドライン
[3]Infectious Diseases Society of America Clinical Practice Guidelines for Clostridium difficile Infection in Adults and Children: 2017 Update by the Infectious Diseases Society of America (IDSA) and Society for Healthcare Epidemiology of America (SHEA)
[4] Infectious Diseases Society of America Clinical Practice Guideline by the Infectious Diseases Society of America (IDSA) and Society for Healthcare Epidemiology of America (SHEA): 2021 Focused Update Guidelines on Management of Clostridioides difficile Infection