オンコタイプDx乳癌再発スコア®プログラム:これからどう広まる?

司会「本日は、乳腺科の先生方をお招きし、まもなく保険適応となるオンコタイプDx乳癌再発スコア®プログラム(以下オンコタイプDx)について、ご意見を伺いたいと思います。司会は、がん研究家で製薬会社勤務の私が務めさせて頂きます。」

乳腺科医師A先生(以下A)「市中病院に勤務している乳腺科医です。」

乳腺科医師B先生(以下B)「大学病院勤務の乳腺科医です。臨床に従事しながら研究を行なっています。」

オンコタイプDxの結果はTAILARx試験とRxPONDER試験に準じて解釈する

司会「まずオンコタイプDxの概要について確認しましょう。」

A「オンコタイプDxは、ホルモン受容体陽性でHER2陰性な乳癌の再発に関わる、21遺伝子の発現状況を調べる検査です。」

B「再発スコア、再発率、化学療法の上乗せ効果が、数値結果として返ってきます。薬物療法の方針を決める助けになります。」

司会「保険適応の対象は、ホルモン受容体陽性かつHER2 陰性でリンパ節転移陰性、微小転移又はリンパ節転移1~3 個の方ですね。」

司会「オンコタイプDxの有用性を示す根拠となる試験は2つあります。リンパ節転移陰性の方を対象にしたTAILORx試験[1]と、リンパ節転移陽性の方を対象にしたRxPONDER試験[2]です。」

A「TAILORx試験では、再発スコアが25以下で化学療法を省略した場合、予後の低下は認められませんでした。ただし、50歳以下かつ再発スコアが16-25の方は、化学療法群で遠隔再発の低下が示されました。RxPONDER試験では、再発スコアが25以下で閉経後の場合は、化学療法の上乗せは予後を改善しませんでした。閉経前では予後の改善が得られています。」

<試験結果のまとめ>


司会「乳癌ガイドラインでは、TAILORx試験の結果をうけて、リンパ節転移陰性であれば、オンコタイプDxの再発スコアが25以下の場合、化学療法を省略することが強く勧められています。ただし、50歳以下かつ再発スコアが16-25の方は、化学療法を検討してもよいと書かれています。」

A「私は、リンパ節転移陽性でも、再発スコアが25以下なら化学療法は省略できると説明します。ただし、閉経前なら再発スコアが25以下でもRxPONDER試験の結果を受けて化学療法をすすめます。RxPONDER試験の結果は、まだガイドラインに反映されていませんね。」

司会「RxPONDER試験は、十分な観察期間がとれ、論文化されました。今後RxPONDER試験は、高いエビデンスをもつ臨床試験としてガイドラインに掲載されると思います。」

A「そうなると、リンパ節転移陽性、閉経前だと、オンコタイプDxの結果に関わらず化学療法を行うことになりますね。」

化学療法の副作用を避けたい症例はオンコタイプDxのよい適応になる

司会「RxPONDER試験の結果通りにすると、リンパ節転移陽性かつ閉経前の場合、再発スコアが低くても化学療法をすることになります。わざわざ検査しなくてもいいということになりますね。リンパ節転移陽性かつ閉経前でも、あえてオンコタイプDxを行いたい症例はありますか?」

B「化学療法の副作用で髪が抜けることへの抵抗が強い人は、オンコタイプDxを希望されるかもしれませんね。閉経前だと化学療法による閉経も問題になります。妊孕性温存を強く望む方は、オンコタイプDxが選択肢になると思います。」

司会「リンパ節転移陰性かつ50歳以上閉経後のような、オンコタイプDxによって化学療法を省略できる可能性が高い症例には、オンコタイプDxを勧めますか?」

B「基本は勧めません。今のところ、オンコタイプDxはいかに化学療法を省略するかを命題としていると理解しています。TAILORx試験には、核グレード1、腫瘍径1㎝未満の症例は含まれていませんでした。従来、再発低リスクとされてきた人にはオンコタイプDxの結果を適応することはできないと思います。」

A「私は、従来であれば再発低リスクとされてきた症例にも勧めます。病理所見上は化学療法はいらないと判断した方の15%が、オンコタイプDxで化学療法が必要になるというデータが出ています[3]。病理所見で判断できないからオンコタイプDxが必要なのだと思います。」

司会「今後、従来では再発低リスクとされ化学療法を省略されていた人の中から、再発高リスク者を拾い上げるという方向のエビデンスが期待されますね。今は、オンコタイプDxは再発リスクを予測するものですが、このエビデンスが出てくると予後を改善するツールになるかもしれません。」

オンコタイプDxのベネフィットは検査結果と患者の価値観に左右される可能性がある

司会「オンコタイプDxによって得られるベネフィットはなんでしょうか?」

B「化学療法を行う場合は、効果を正確に理解して治療に臨むことができます。化学療法を行わない場合は、医療費削減と副作用を回避できることがベネフィットだと思います。」

司会「オンコタイプDxの欠点はなんでしょうか?」

A「保険適応になったとしてもコストが高いことです。治療費は44万5千円、3割負担だと13万円以上かかります。」

A「医師から患者への説明に時間と労力がかかることも予想されます。」

B「オンコタイプDxは、治療を行うか行わないかの判定が、グラデーションを持つ数値の結果で返ってきます。結果が白か黒で返ってくる検査ではないので、説明や方針決定に医師側の能力が必要な検査だと思います。」

B「特に、再発スコアが16-25で返ってくると説明が難しいです。検査前に、化学療法をやるか、やらないか、判断がつかない結果になる可能性について説明しないと、患者に過度な期待を持たせてしまう危険性があります。」

A「再発スコアが中間値で結果が返ってきた場合は、化学療法の上乗せ効果の数値に、患者がどの程度価値を感じられるかによって治療方針を決めるしかないと思います。」

司会「コストとベネフィットのバランスは、結果や、患者の価値観によっても左右されるということですね。」

B「日進月歩のがん治療では、化学療法のレジメンが変わる可能性があります。オンコタイプDxの再発スコアの有効性が、どの程度レジメンの進歩についてこられるのかという点も気になります。」

A「オンコタイプDxが保険適応になり検査が広まることで、また新たなエビデンスが作られ使われ方も変わっていくでしょうね。最終的には、予後を改善するツールになることを期待しています。」

司会「まとめますと、
・オンコタイプDxは、ホルモン受容体陽性HER2陰性乳癌の再発リスクと化学療法の効果を予測する検査である。
・再発スコアが25以下の場合は化学療法の省略が可能だが、若年や閉経前の場合は例外がある。
・まずは化学療法を避けたい方を対象に広まるだろう。
・再発リスクが低値、高値の場合は、治療方針が決まるというベネフィットがある。中間値の場合は、医師の説明能力が問われ、治療方針の決定には患者の価値観とのすりあわせが必要となる。
ということですね。本日はありがとうございました。」

執筆:Hidallas@乳腺科

参考文献:
[1]Sparano JA et al. Adjuvant Chemotherapy Guided by a 21-Gene Expression Assay in Breast Cancer. N Engl J Med. 2018 July 12; 379(2): 111–121
[2]Kalinsky K et al. 21-Gene Assay to Inform Chemotherapy Benefit in Node-Positive Breast Cancer. N Engl J Med. 2021 Dec 16;385(25):2336-2347
[3]Dieci MV st al. Impact of 21-Gene Breast Cancer Assay on Treatment Decision for Patients with T1–T3, N0–N1, Estrogen Receptor-Positive/Human Epidermal Growth Receptor 2-Negative Breast Cancer: Final Results of the Prospective Multicenter ROXANE Study. The Oncologist 2019;24:1424–1431