今大きく変化してきている脳SRTの現在!

今大きく変化してきている脳SRTの現在!
脳転移の治療法として広く普及しているSRTですが、2010年ごろから大きな転換点を迎えていることをご存じでしょうか。低侵襲化が進み、一度に複数個、照射することで短時間の治療が可能になっています。

本記事では時系列に沿って、脳SRTの進化をみていきましょう。

そもそもSRTってどんな照射なの?
脳SRTはstereotactic radiation therapyの略で、日本語では定位放射線治療と訳されます。日本語のとおり「位」置を「定」める治療の事で、精度が高い、いわゆる「ピンポイント照射」と言われるものです。日本の保険診療上では、脳のSRTは2㎜以内の精度が求められています。

脳SRTの始まり
最初にSRTに使われた機械はγナイフです。スウェーデンのレクセル博士が様々なプロトタイプを経て、現在のγナイフに近いものを開発しました。

定位脳生検を参考に頭蓋骨に直接リング状の固定具を付け位置精度を担保し、コバルトのγ線を目標の一点に集めるという斬新な治療装置で、現在も脳転移の治療として使われています。

最初は脳転移以外の治療
γナイフは当初脳転移ではなく、下垂体腫瘍・聴神経腫瘍・脳動静脈奇形などに使われていました。これらの疾患は現在でも定位照射がおこなわれています。

その後、脳転移に使われ非常に良好な成績が報告されたことから、脳転移の治療として普及していきます。このころには、通常のX線治療装置(リニアック)でもγナイフ程の線量集中性は無いものの、定位照射がおこなえるようになり、小さな脳転移の治療は1〜3個であればSRTの方針となっていきました。

リングでの固定からマスクへの固定へ
SRTは位置精度の都合上、頭蓋骨に直接金属のリングを固定してから、治療用画像を撮影し、それから治療計画をするという流れが一般的でした。そのため、治療計画中、患者は金属のリングをつけた状態で待たなければなりません。

2000年代前半になり、可塑性プラスチックを使用し、患者個々にあわせて頭部をきつく固定するマスクを作成することで治療中の精度を担保できるようになりました。さらに、複数枚のX線画像の照合などにより、マスクを着けていない間の精度も担保できるようになります。その結果、患者は治療と計画の間、固定の必要がなくなり、一気に低侵襲なSRTが可能になったのです。

γナイフではリニアックに比べマスク固定の普及は少し遅れましたが、現在ではマスク固定での治療が主流になりつつあります。

SRTの適応症例の変化
個数の適応の変化:JLGK 0901試験
一般的にガイドラインなどではSRTの適応は1〜3個とされていました。しかし、日本のγナイフの専門家を中心におこなわれた、JLGK0901試験で以下のような結果が出ました。
・最大長径3cm未満
・最大体積10ml未満
・合計体積15ml以下

上記の条件であれば、脳転移2〜4個と5〜10個の間で予後は変わらないという結果です[1]。この結果により、小さな転移が複数個あっても、SRTをするというのがスタンダードになりつつあります。

大きさの適応の変化
マスク固定によって、複数回の照射の導入がおこなわれるようになりました。複数回の照射によって、原理的には正常組織を守る事が可能です。

分割照射をおこなうことで、今まで大きさで適応外となっていた症例も脳壊死を減らせることが期待され、安全にSRTがおこなえるのではないかと言われています。

一度に多数個の照射ができるように
今までの定位照射は一つひとつの転移に対して、照射の焦点を絞り、照射するというのが一般的でした。それが大きく変わりつつあります。

コンピューターと照射の発達で、2010年代後半から焦点を複数の転移の重心などにし、複雑な照射をおこなえるようになりました。10個程度の定位照射を一焦点で一度にやってしまうという方法が、リニアックで可能になっています[2,3]。

一度に多数個の照射をおこなう照射では、原理上、照射回数は変えられませんが、一つひとつ照射線量を変えることは可能です。これらの方法を使うと、きわめて短時間で多数の脳転移に照射することができます。

SRTは2010年代後半から急速に転換期を迎えている
この記事では、脳SRTの発展を時系列に沿って解説しました。脳SRTは現在γナイフでもマスク治療ができるようになり、分割照射が可能になりました。また、リニアックでの最先端治療では短時間で複数個の照射ができるようになり、患者の負担は大きく減ってきています。

リニアックの短時間多数個照射は魅力的ですが、γナイフの線量集中性はやはり高く、脳転移の個数などでどのようにすみわけが起こってくるか、今後注目が必要です。

執筆:関西の放射線治療医

参考文献
[1]Yamamoto M et al. Stereotactic radiosurgery for patients with multiple brain metastases (JLGK0901): a multi-institutional prospective observational study Lancet Oncol. 2014
[2]https://www.brainlab.com/ja/radiosurgery-products/rt-elements/automatic-brain-metastases-planning/(参照2022-8-23)
[3]https://www.varian.com/ja/products/radiotherapy/treatment-planning/hyperarc (参照2022-8-23)