感染症専門医が解説「薬剤耐性(AMR)対策に取り組むため、感染症科コンサルテーションを有効に活用しよう!」

感染症専門医が解説「薬剤耐性(AMR)対策に取り組むため、感染症科コンサルテーションを有効に活用しよう!」
皆様は、薬剤耐性(Antimicrobial Resistance:AMR)という言葉を聞いたことがありますか?AMRとは主に抗菌薬が細菌に効かなくなることです。何も対策をしなければ、世界中で2050年にAMRで死亡する人数が年間1000万人に達すると報告されています [1]。

AMR対策のひとつに抗菌薬の適正使用があります。日々の診療で、抗菌薬の適正使用を意識していますか?感染症科(抗菌薬適正使用支援チーム:AST〔Antimicrobial Stewardship Team〕含む)にコンサルテーションすることで、抗菌薬の適切使用が可能になります。一方で、主治医チームと感染症科で方針があわないこともあるかもしれません。方針があわない場合、どのような事を心がけていますか?

この記事では明日からの診療に役立つ、AMR対策に取り組むための感染症科コンサルテーションの有効な活用方法を紹介します。

AMRは世界中の大きな問題である
現代の医療では感染症治療のみならず、手術や移植医療における感染症予防等さまざまな場面で抗菌薬が使用されています。AMRの問題が深刻化した場合、手術や移植医療における感染症予防の治療薬がなくなってしまうため、さまざまな治療に影響が出てしまいます。

AMR対策として、日本では「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン 2016-2020」を掲げ、次の6つの分野ごとに、目標・戦略・取り組みを設定して対策をおこなっています [2]。
①普及啓発・教育
②動向調査・監視
③感染予防・管理
④抗微生物薬の適正使用
⑤研究開発・創薬
⑥国際協力

日本アクションプランの特徴は、成果指標があることです。2013年と比較した2020年のヒトにおける抗菌薬の成果指標は以下の通りです。
・全体で33%減少
・広域経口抗菌薬(セファロスポリン系抗菌薬・フルオロキノロン系抗菌薬・マクロライド系抗菌薬)で50%減少
・静注抗菌薬で20%減少

2020年のヒトにおける抗菌薬の使用量は、全体で29.9%、広域経口抗菌薬は41.1%、静注抗菌薬は1.1%減少しました。静注抗菌薬以外の指標は、成果指標に近い結果が得られたことは評価されています。一方で2020年は新型コロナウイルス感染症の影響を強く受けたため、結果は注意深く評価されなければならないとも言われています。

感染症科コンサルテーションのメリットはAMR減少と患者の予後改善である
感染症科への主なコンサルテーションは、原因不明な発熱や炎症反応高値、まれな病原微生物を認めた場合などです。それでは、感染症科はコンサルテーションを受けたら、具体的にどのような事をおこなっているのでしょうか?

コンサルテーションを受けた感染症専門医は、まず、丁寧な病歴聴取と身体所見、過去の抗菌薬投与歴や検出された病原微生物、入院経過などから適切な診断を考えます。相談を受けた事例すべての原因が感染症ではありません。発熱や炎症反応高値の原因は、深部静脈血栓症や結晶性関節炎(偽痛風)、薬剤熱といった非感染症の場合もあります。

次に、検出された病原微生物や薬剤感受性の解釈を検討します。まれな病原微生物が検出された場合に重要なことは、病原微生物のプロである細菌検査室の臨床検査技師と相談することです。経験豊富な細菌検査室の臨床検査技師は、感染症専門医よりも病原微生物について詳しいことがあります。

最後に、患者の状態や病原微生物・抗菌薬の特徴を考え、適切な抗菌薬を選択し、最適な投与期間を考えます。AMRの原因のひとつは、多くの病原微生物に有効な広域抗菌薬の使用です。AMR対策のため、感染症専門医はなるべく病原微生物に特異的な狭域抗菌薬を選択します。

感染症科コンサルテーションのメリットはAMR減少だけではありません。感染症科コンサルテーションにより、黄色ブドウ球菌血症やカンジダ菌血症などで、患者の予後が30〜50%改善するという報告があります[3][4]。

方針が合わない時は、患者のことを第1に考え「対面」でコミュニケーションをとろう
感染症科コンサルテーションが有効であることはわかっていても、実際の臨床現場では、主治医チームと感染症科で方針があわない時があることも事実です。医療は教科書通りにはいきません。たとえば、方針があわない状況には以下があります。
・現在おこなわれている治療でも臨床経過が問題ない場合
・患者は早期退院を希望しているが、感染症科は入院継続して静注による抗菌薬投与を推奨する場合

皆様は他の診療科とのコミュニケーションは、普段どのようにとっていますか?コミュニケーションの方法として、カルテへの記載のみ、電話連絡、対面での説明などがあります。カルテ上のやりとりで済ませることなく、最低限は電話を用いて直接コミュニケーションをとりましょう。

また、対面でコミュニケーションをとることで、身振りや手振りなどからよりよいコミュニケーションがとれるといわれています。方針があわないときこそ、是非「対面」でコミュニケーションをとるように心がけてみてください。患者の予後をよくしたいという思いは同じはずなので、よいコミュニケーションをとることで、具体的な解決策が導かれるはずです。

AMR対策に取り組むため、感染症科コンサルテーションを有効に活用しよう
AMRは世界中の問題です。感染症科コンサルテーションによって、AMRが減少し、さらに患者の予後も改善します。しかしながら、主治医チームと感染症科で方針があわないこともあります。方針があわない時は、患者のことを第1に考え「対面」でコミュニケーションをとり、患者にとってベストな方針を見いだしていくことが重要です。

参考文献:
[1] Jim O’Neill. Antimicrobial Resistance: Tackling a crisis for health and wealth of nations. https://amr-review.org/sites/default/files/AMR%20Review%20Paper%20-%20Tackling%20a%20crisis%20for%20the%20health%20and%20wealth%20of%20nations_1.pdf. アクセス日:2022年7月22日
[2] 国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議.薬剤耐性(AMR)アクションプラン2016-2020. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000120769.pdf. アクセス日:2022年7月22日
[3] Honda H, et al. The value of infectious diseases consultation in Staphylococcus aureus bacteremia. Am J Med. 2010 Jul;123(7):631-7. doi: 10.1016/j.amjmed.2010.01.015. Epub 2010 May 20. PMID: 20493464.
[4] Ishiakne M, et al. The impact of infectious disease consultation in candidemia in a tertiary care hospital in Japan over 12 years. PLoS One. 2019 Apr 25;14(4):e0215996. doi: 10.1371/journal.pone.0215996. PMID: 31022251.

執筆:Lemon@感染症