イシヤク肺がん徹底討論シリーズ第2弾「術後アテゾリズマブの実際のところ」

イシヤク肺がん徹底討論シリーズ第2弾
術後アテゾリズマブの実際のところ
キュート先生
皆様こんばんは。それでは22時の定刻となりましたので、本日のイシヤク肺がん徹底討論を始めたいと思います。私は、日本鋼管病院呼吸器内科の田中希宇人と申します。SNS上ではキュート先生の名前で医療情報発信を行っています。本日は、シリーズの第2弾として、「COIなし術後アテゾの実際のところ」をテーマに、3人の先生にリアルなお話を伺っていきたいと思います。それでは本日のディスカッサントの先生をご紹介いたします。まず、呼吸器内科の次富先生、自己紹介をお願いいたします。

次富先生
はい。前回に引き続きまして今回もよろしくお願いします。呼吸器内科医の次富と申します。関東の腫瘍専門施設で胸部悪性腫瘍の薬物療法を中心にやっております。今回も周術期の薬物療法ということで外科の先生方のご意見、大変楽しみにしております。よろしくお願いします。

キュート先生
どうもありがとうございます。続きまして呼吸器外科の濱路先生、よろしくお願いいたします。

濱路先生
私も前回に引き続きよろしくお願いします。大学病院で呼吸器外科専門医をしております濱路と申します。手術と術前・術後治療も、積極的に取り組んでおります。

キュート先生
よろしくお願いいたします。最後に同じく呼吸器外科の原先生、よろしくお願いいたします。

原先生
私も前回に引き続きよろしくお願いいたします。市中病院スタッフ2人の呼吸器外科部門で、手術と化学療法両方とも取り扱っております、医師15年目の原と申します。
キュート先生
よろしくお願いいたします。それでは本公演に関しまして私はCOIはございません。
次富先生
私も特にCOIはございません。

濱路先生
はい、私もございません。

原先生
私もございません。

キュート先生
ありがとうございます。本日の内容は、まず初めに私が、「IMpower010試験」の概要を簡単に説明しまして、後半は、術後アテゾの良いところ悪いところ、そして術後アテゾを使うか使わないか。最後にEGFR陽性のPD-L1陽性の患者さんに対して、オシメルチニブ、アテゾリズマブのどちらを使うかというテーマに関してのディスカッションをしていきたいと思います。
では、まずIMpower010試験の概要です。現在早期の非小細胞肺癌に対する術後補助化学療法としては、ガイドライン2021年度版に掲載されている通り、完全に切除された病期の1〜3a期の非小細胞肺癌の従来の標準治療は切除後のシスプラチン併用の術後補助化学療法でした。ここでは5年生存割合が術後の補助療法を行った患者さんで44%から69%、行わなかった患者さんで27%〜58%ぐらいという結果が過去の試験で示されておりまして、2010年頃の報告になりますが、術後に補助療法が推奨されるというエビデンスになっております。
今回、このIMpower010試験が報告されましたので、少しこの部分が変わってきます。IMpower010試験は、抗PDーL1抗体アテゾリズマブによる術後補助化学療法の有効性や安全性についてプラセボ群と比較検討した多施設共同ランダム化非盲検の第3相試験になっております。
試験のデザインとしては、術後の病期1b〜3a期の非小細胞肺がんの患者さん、1280例を集めております。18歳以上、PSが0〜1で、EGFRやALK変異などのドライバー変異陽性患者さんが含まれております。患者さんの術後に術後補助化学療法を1〜4サイクル行っております。ここでの術後補助化学療法は、シスプラチンとビノレルビン・ドセタキセル・ジェムシタビン・ペメトレキセドが用いられています。
補助化学療法を行なった後にアテゾリブマブ群と支持療法群に分けられ、両群が大体500例ほどです。アテゾリブマブ群は1200mgを、最大16サイクル、約1年行っています。その後に主要評価項目として、無病生存期間、DFSが評価されており、段階的にPD-L1が陽性の2〜3a期の方、そして2〜3a期の全集団、そして最後にITT集団で、このDFSが評価されています。こちらは昨年のASCOで報告された図になりますが、PD-L1が陽性の患者さん、2〜3a期のDFSのカプランマイヤー曲線になります。横軸が、1年、2年、3年と評価されておりまして、DFS無病生存期間が評価されています。
無病生存期間とは、完全に切除された腫瘍が再発するまでの期間です。Median DFSでアテゾリズマブ群が未到達、そしてBSC群が35.3ヶ月ということでハザード比が0.66となっております。つまり、PD-L1陽性患者さんの2〜3a期でのアテゾリブマブの1年投与、再発そして死亡のリスクを34%下げることが報告された結果になりました。
そして、サブグループ解析を見ていきますと、例えば、年齢、性別、そして人種、PS別に見ても点推定値がアテゾリズマブbetterの方に寄っておりますし、2a期、2b期、3a期ともにアテゾリズマブbetterの方に寄っています。この試験では、EGFR、そしてALKの患者さんも含まれた解析がなされております。
続きまして2期〜3a期ですね、PD-L1によらない患者群で調べましても、1年、2年、3年とカプランマイヤー曲線が交差することのない結果が示されていたり、サブグループ解析で、ここではSP263で評価されており、PD-L1が高発現群そして陽性群と陰性群が、いずれもアテゾリズマブbetterの方に点推定値が寄っていることがわかります。
また、ITT集団の結果も報告されております。こちらも上の方のラインがアテゾリズマブ群になっておりますが、交差することなくDFSを引き離した結果が示されております。以上がIMpower010試験の概要でした。
ここからは後半のディスカッションテーマに移っていきたいと思います。術後のアテゾリズマブのすごいところ・気に食わないところについて、まず次富先生からお話を伺っていきたいと思います。

次富先生
まずは、術後補助化学療法というのが日本においてはシスプラチン・ビノレルビンしかなかったところに新しく登場した治療であるという点で、一つ大きなブレークスルーになったと思います。DFS、さらには本試験に関してはOSに関する情報もある程度、ポジティブな結果として出てきているというところが非常に優れたところかなと思ってます。
キュート先生
ありがとうございます。逆に問題点はどうでしょうか?

次富先生
いくつかあるのですが、本試験も基本的にはプラチナ後にやっていますので、例えばUFTが対象になる集団に対してはどうするべきなのか、あとはPD-L1の発現率でも1〜49%と50%以上での違いがあります。50%以上は非常に優れた結果ですのでそこに使う分には何の疑問もないと思うんですが、低発現に対しても、同様に同じ推奨でいいのかながまだ私の中では答えが出てないところかなと思います。

キュート先生
ありがとうございます。それでは外科先生の方にも伺いたいと思います。濱路先生よろしくお願いいたします。

濱路先生
IMpower010の科学的に評価できるところは、PD-L1の陽性率別に、しっかり結果がわかれたところかなと思っています。特に今回のPD-L1は、おそらく切除検体を使ってると思いますので、私の理解が間違ってなければ多分そうなのですが、小さな生検検体ではなくて、腫瘍本体の大きな検体を使うと、やはりPD-L1の評価はより正確に出るという論文もありますので、そういう点では結構信頼に足る想像通りの結果だったと思います。それがこの試験の強みだと思います。

キュート先生
ありがとうございます。では、逆に気に食わないところはどこにありますでしょうか?

濱路先生
あまりないのですが、アテゾリズマブでないと駄目なのかという点ですね。他にもPD-L1阻害薬やPD-1阻害薬があるので、他はどうなのかというのと、もう一点は前回、次富先生に指摘されて、はっと思ったのが、医療費ですね。オシメルチニブを3年間投与すると2200万円程度かかると伺って、医療費の視点を認識したのですが、そういう点ではアテゾリズマブを使うと1年で360万ぐらいかかるのは、医療経済上は少しマイナスかなと思います。

キュート先生
ありがとうございます。同じく外科の原先生のご意見はいかがでしょう?

原先生
そうですね。ICIが術後補助化学療法という形式で使えなかったのが、今回使えるようになったというのは、再発のセッティングではフロントラインでICIを使う方が効果が期待できることを知りながらも、先にアジュバントとしてプラチナタブレットのみを行うのは、腑に落ちてないところがありました。ですので、ICIをsequentialではあるけども使えるようになったのは、かなり大きいと考えています。

キュート先生
逆に、この点はちょっと使いづらいのかなとか、ありますでしょうか?

原先生
使いづらさという意味では、前回オシメルチニブの時にも申し上げたのですが、当院で使用するプラチナはほとんど再発でのカルボで、改めてシスプラチンを使うというマネジメントを考えないといけないという問題があるかなと思います。あとは、あくまで企業ベースとしてはこれが正解なのだろうとは思うのですが、この試験のデザインとして、通りやすそうなところから順次通していったところは、少しいやらしいなと思いました。

キュート先生
ありがとうございます。今日はCOIがないですので、何を言っても大丈夫ですね。それでは、二つ目のテーマに移っていきます。この術後アテゾを、実際の臨床の現場で、目の前の患者さんに扱っていくか、それともちょっと様子見ようかに関してお伺いしたいと思います。濱路先生はいかがでしょうか?

濱路先生
今も、お一人、すでに実際に使っていますね。当初ステージ1と思ってで手術した人なのですが、肺門リンパ節が陽性で結局N1でした。つまり最終病理でステージ2Bになった方です。その方は、少し年齢が高く、術後補助化学療法はカルボプラチン+パクリタキセルを行いましたが、腎機能がさらに悪くなり、中止せざるを得ませんでした。患者さんはどうしてもあと10年生きたいという方だったので、それだったらちょっと長くなりますけどやりますかという話で、今行っているところです。あともう1人若い方で同じような方がいたので、この方も近々アテゾリズマブを投与するかなと思います。

キュート先生
ありがとうございます。先生は呼吸器外科でいらっしゃって、元々免疫治療は、実臨床の現場で使用経験というのはいかがでしょうか?

濱路先生
いえ、再発のときに2人、3人ぐらい使ったことあるのですが、やはりirAEのマネージメントには懸念はありますので、何かあったときはすぐ相談できる呼吸器内科医とのホットラインはキープしてます。
キュート先生
ありがとうございます。私も内科の立場ですけれども、今、免疫治療が呼吸器内科・外科だけではなく、非常に多くの診療科で使われるようになって、確かにいろんな連携が大事かなと日々感じているところです。それでは、同じく外科の原先生、実際に術後アテゾを使う使わないに関してはいかがでしょうか?

原先生
実際にまだ適格症例は出てきていないのですが、ステージ2以上に関しては出てきた段階でこれまでの術後補助化学療法よりも強くおすすめしたいと考えています。あとはコロナ病床の関係で、入院ケモも外来ケモもかなり行いにくい状況になってますので、どうマネジメントしていくかは今後の課題として考えています。

キュート先生
ありがとうございます。術後アテゾはPD-L1が陽性の患者さんに対して、使えるということですが、PD-L1の発現率に関して、低発現でしたら使いにくいとか、逆に100%とか90%とか積極的に使っていこうとか、PD-L1別にお考えが変わったりすることはありますでしょうか?

原先生
50%以上に関しては、文句なしかなと思うのですが、1〜49%をどう扱うかは、なかなか難しいと思います。プラチナの入りやすさでも推奨度合いが変わると思います。うちは、プラチナ自体がかなり入りにくい施設ですので、そういう意味ではやるかやらないか、プラチナアテゾを含めてやるか、全くやらないか、という二択になるのかなと考えています。

キュート先生
ありがとうございます。その後1年間のアテゾありきでやっていくという考えですね。それでは、内科の立場から次富先生はいかがでしょうか?

次富先生
私は、現在既に始めた症例はないのですが、今、シスプラチン、ビノレルビンのアジュバントをやってる症例を何例か担当しています。プラチナを導入する時点で、前半として4コースの投与が終わったら後半にこういった治療がありますよ、ということは提示していて、基本的にはPD-L1発現率に関わらず同様に推奨しています。

キュート先生
ありがとうございます。今回は2期〜3a期ですが、前回のディスカッションの時にも、外科の先生の手術がどのくらい完璧に行えたかという感触もあることをお伺いしました。次富先生は、1b期は少し悩ましいというところですけれども、病期別にアテゾリズマブの処方意向が変わったりしますでしょうか?

次富先生
基本的にもちろんリンパ節転移が陽性など、より進行した病期に対して推奨すべきと思いますが、基本的にはそうでなくてもプラチナが入るステージングであれば、推奨しています。オシメルチニブとの大きな違いは、免疫チェックポイント阻害薬ですので免疫サイクルの平衡層に戻していく作用が主に期待されてるところだと思います。そういう意味で、オシメルチニブよりは積極的に、病期に関わらず推奨しています。

キュート先生
ありがとうございます。確かに今回のIMpower010を見ても、アテゾリズマブの1年間の投与が終了した後も、ADAURA試験でのオシメルチニブ3年間終了後にカプランマイヤーがガクっと落ちるような、急に再発症例が増えることがないことは良いことかと思っています。免疫治療ならではのテールプラトーに近いような効果、長期の効果が期待できるのは私も賛同したいところです。
それでは、3つ目のディスカッションテーマです。実際に手術した患者さんがEGFR陽性でPD-L1が陽性だった場合に、実際にはオシメルチニブもアテゾリズマブのどちらを使うかに関して、今回は原先生からお伺いしていきたいと思います。

原先生
両方とも陽性という場合においては、効果よりは有害事象の起こりやすさの観点から、TKIをPD-L1阻害薬よりも先に使うのがマネジメントしやすいと考えてます。というのも、ICI使用中に再発した時にTKIをすぐ使えるかが一番の懸念事項になりますので、効き目はどうかなと思いながらも多分TKIを先に使うことをおすすめすると思います。

キュート先生
ありがとうございます。とても理解できるご意見です。そしたら次富先生いかがでしょうか?

次富先生
そうですね。原先生のご意見と基本的には同じでして、両方陽性であれば、効果とかいろいろ思うところがあるのですが、やはりADAURAを推奨せざるを得ないのかなと思ってます。ただ薬理作用とかを考えると、今後EGFR陽性症例に、術前にTKIが使えるようになると、術前TKIで小さくして手術する形に持っていくのが本当は一番適切なのではないかなと、逆に術後に使うのであれば、やはりICIの方がいいのかなと私は思います。

キュート先生
ありがとうございます。そうですね、術前になるべく叩いて、手術をより縮小できたり侵襲度を減らしたりというのはとても大事な考え方だと思います。では最後に濱路先生のご意見はいかがでしょうか?

濱路先生
これは私の方が教えていただきたい、というのが正直なところですが、EGFR陽性でもPD-L1別に予後が変わってくるというのは、確か進行肺がんでも早期でもデータがあったかと思うので、例えばPD-L1が50%であれば個人的にはICIを使いたい気はします。ただ、先ほど原先生おっしゃったように、副作用のことを考えるとEGFR阻害薬から先になるかなと思いますので、このあたりリアルワールドデータが必要な気がします。ちなみにEGFR阻害を術前に投与してから手術、というのは結構魅力的なのですが、今のところデータ見ると、それで治ってる症例はかなり少ないようです。分子標的薬の後のサルベージ手術はなかなか根治に結びつかないというのが今の日本のデータみたいなので、この辺は答えがないところかなと思います。

キュート先生
ありがとうございます。確かに、内科と外科の先生方で見方が違うと思いますが、周術期に関しては、内科外科と多くの診療科が合わせて一番患者さんにとって良い方法を模索する必要があると思います。私もここに関してはEGFR陽性の患者さんに周術期どうするかなと思うのですが、薬の順番を、再発した時どうするかを考えると、オシメルチニブから免疫治療かなと思ってしまいます。ただし、これは答えがあるのかないのか分からないところですので、今後の長期的なOSとか、場合によってはEGFRの方だけを集めた試験が大事かなと思います。

最後に、私が気になっている、取り切っちゃったかもしれない患者さんに対して、アテゾを1年間使い続けていくことがどのような感覚なのかに関して、原先生、どのようなイメージでしょうか?

原先生
そういう症例に限って、ICIを使うことは、まさに感覚で選ぶ気がします。この症例は取れたからまあいいかな、とか、この症例は自分の中で郭清に納得してないから使う推奨度合いが少し上がるかな、とか変わる気がします。

キュート先生
ありがとうございます。濱路先生はいかがでしょうか?

濱路先生
そうですね。おそらくN1N2の症例は、科学的にはマイクロの病変は残っていると考えた方がいいと思います。私達の立場としては取ったと言い切りたいのですが、やはり半数ぐらいの人は残ってると思う方が正しいかなと思います。

キュート先生
ありがとうございます。では最後に次富先生はいかがでしょうか?

次富先生
私達は、手術に関しては外科の先生に完全におまかせして、できるベストを尽くしていただいて、その後アジュバント適用症例であれば、私達にご紹介いただくというフローでやっております。ただ実際にキャンサーボードの中で、術中の感じで、先程、原先生がおっしゃったように、完全にもう納得いく仕上がりだったのか、少し怪しい感じがあるかは伺っています。ただそれがあってもなくても、もちろん推奨できるステージングであれば、アジュバントは推奨していくというスタンスでやっております。

キュート先生
ありがとうございます。本日のディスカッションが、皆様の肺癌診療の一助になれば幸いです。本日のイシヤクWEB講演会を終了いたします。皆様どうもありがとうございました。